Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:音場およびファントム

(S431)

ファントムに用いる生体擬似組織および擬似血液の材料設計

Material Design of Tissue-Mimicking Material and Blood-Mimicking Fluid for Phantoms

吉田 知司1, 田仲 浩平1, 佐藤 一石1, 近藤 敏郎1, 安川 和宏2, 宮本 信昭2, 谷口 雅彦2

Tomoji YOSHIDA1, Kouhei TANAKA1, Kazuishi SATO1, Toshio KONDO1, Kazuhiro YASUKAWA2, Nobuaki MIYAMOTO2, Masahiko TANIGUCHI2

1徳島文理大学理工学部, 2タキロン株式会社メディカル研究所

1Faculty of Science and Engineering, Tokushima Bunri University, 2Medical Institute, Takiron Co., Ltd.

キーワード :

【背景と目的】
超音波診診断装置の性能を評価するためファントムが広く用いられている.特性が経時変化しないファントムを実現するため,物性が安定した新しい生体擬似組織と擬似血液を提案した.物性値が明示され長期にわたりそれが変化しないことが確認された工業材料を用いることにより,物性が安定した生体擬似組織と擬似血液を再現良く作成することを計画した.
【方法】
ファントムを構成する生体擬似組織と擬似血液の物性値はIEC規格[1]で規定されており,この値を満たす必要がある.生体擬似組織を実現するため,Segmented Polyuretan Gel (SPUG)の音速と密度が異なるPolymetyl Methacrylate (PMMA)粉体とポリスチレン粉体を分散させて規定の音波物性値になるようにした.物性値を規定値にするため3種類の材料の混合比を決める必要がある.3種類の材料の密度と音速が既知の場合,混合比から粉体を分散させた音速,密度は,Urickの理論[2]から与えられる.減衰値も粉体の粒径と溶液の粘度が与えられていると計算できる.擬似血液を実現するため,擬似血液の密度の規格値と等しい密度のポリスチレン粉体を分散材として採用した.ポリスチレン粉体が均一に分散して沈澱しないためには溶液の密度もポリスチレン粉体の密度と同一でなければならない.このような制約の基に擬似血液の物性(密度,音速,減衰値,その他)が規格値を満たさなければならない.擬似血液において溶液に分散させるべき粉体量と溶液が備えるべき音速について,上記のUrickの理論から与えられる.グリセリンと水溶性シリコンオイルからなる水溶液により規定の密度と音速の擬似血液の基となる水溶液を作成することにした.3成分の水溶液について,その密度と音速を与える理論は,確立されていない.実験から3成分の目的とする最適の比率を求めるには多大な実験データの集積が必要となる.Scheffの数式モデルを適用して溶液の混合比の最適解を求めた[3],[4].
【結果】
Urickの理論に基づく理論式からゲルにおける粉体の分散量を計算して作成した擬似生体物質の密度,音速及び減衰値はそれぞれ規格値を満たすことができた.Urickの理論に基づく理論式とScheffの数式モデルを適用して溶液の混合比の最適解から擬似血液の水溶液のグリセリンと水溶性シリコンオイルの混合量と粉体の分散量を計算に基づき作成した擬似血液の密度,音速および減衰値はそれぞれ規格値を満たすことができた.
【結論】
数値計算により生体擬似組織および擬似血液の材料設計が可能となり,ファントムを効率よく開発できた.
【参考文献】
[1]IEC: IEC61685. Ultrasonics-Flow measurement systems Flow test object (International Electrotechnical Commission, Geneva, 2001)
[2]R.J.Urick: J. Appl. Phys. 18, (1947) 983
[3]Henry Scheffe: J. Royal Statistical Soc.B 23(1961) 344.
[4]M. Iwasaki: Design and Analysis of Mixture Experiments (Saientesuto Sha, Tokyo,1994) p.52.