Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:消化器 奨励賞

(S415)

Shear wave velocityの膵疾患への臨床応用の検討

Utility of shear wave velocity in clinical practice for pancreatic disorders

河田 奈都子, 高田 良司, 山井 琢陽, 大川 和良, 上原 宏之, 三栖 弘三, 松野 徳視, 宮崎 さや子, 冨田 裕彦

Natsuko KAWADA, Ryoji TAKADA, Takuo YAMAI, Kazuyoshi OHKAWA, Hiroyuki UEHARA, Kozo MISU, Noritoshi MATSUNO, Sayako MIYAZAKI, Yasuhiko TOMITA

大阪府立成人病センター

Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases

キーワード :

【緒言】
音響放射圧を利用して測定されるshear wave velocity(以下SWV)は組織の硬度と正の相関があるとされる.肝繊維化の指標としてSWVの有用性が報告されているが,膵に対するSWVの有用性についてはほとんど報告がない.膵疾患におけるSWVの臨床応用の可能性について検討した.
【方法】
対象は当院で体表エコーを用いてSWVを測定した連続50例(平均年齢67±14.7歳,男女比33:17).内訳は膵管癌26例,膵管癌以外の膵疾患合併6例,膵疾患非合併18例.使用機器はACUSON S2000(Siemens),使用プローブは6C1または4C1.B-mode上描出が良好であった部位の膵において5回以上SWVを測定し平均値を評価した.なお,膵管癌症例において背景膵のSWVは原則として癌の頭側で測定し,膵管拡張が著明で高度の膵萎縮を認める症例は除外した.1)B-mode上,頭体尾部の全てが描出良好であった健常者4名について各部位におけるSWVの平均値を比較した.2)頭体尾部の各部位ごとのSWV測定の成功率,3)膵管癌症例における癌部と背景膵のSWVの比較,4)年齢,性,測定深度,飲酒の有無,膵管癌の有無と背景膵のSWVとの関連性について検討した.なお,飲酒の有無は週2,3回以上の常習的な飲酒を「多量飲酒群」,上記以下の飲酒を「機会飲酒群」,ほとんど飲まないを「飲酒なし群」として3分類した.
【結果】
1)健常者4名のSWVの平均値は頭/体/尾部で各々1.29±0.20/1.26±0.12/1.26±0.20 m/sで,測定部位にかかわらずほぼ同等の値が得られた.2)SWVは頭/体/尾部で各々94/97/96%の成功率で測定可能であった.3)膵管癌症例におけるSWVの平均値は癌部/背景膵で各々2.38±0.24/1.46±0.32 m/sで,癌部において有意に高値を示した(p=0.008).4)各因子のうちSWVは飲酒の有無とのみ関連性を示し,多量飲酒群/機会飲酒群/飲酒なし群でSWVの平均値は各々1.55±0.27/1.32±0.14/1.17±0.14 m/sであった(p=0.045).膵管癌症例の背景膵と膵管癌非合併症例の背景膵のSWVの平均値は各々1.46±0.32/1.44±0.25 m/sで両群に差はなかった(p=0.88).
【結語】
膵に対するSWVは頭体尾部いずれにおいても高い成功率で測定可能で,B-mode上で膵臓の描出が良好であった健常者では頭体尾部のいずれにおいてもほぼ同等の値が得られた.飲酒量の増加によりSWVは高値となったが,膵管癌症例の背景膵と膵管癌非合併症例の背景膵のSWVでは差を認めなかった.以上より,膵疾患に対するSWVの臨床応用の可能性が示された.