Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:消化器 奨励賞

(S413)

Real-time Tissue Elastographyを用いた膵線維化の評価

Evaluation of Pancreatic Fibrosis using Real-time Tissue Elastography

石井 康隆, 佐々木 民人, 芹川 正浩, 南 智之, 岡崎 彰仁, 行武 正伸, 石垣 尚志, 小酒 慶一, 毛利 輝生, 茶山 一彰

Yasutaka ISHII, Tamito SASAKI, Masahiro SERIKAWA, Tomoyuki MINAMI, Akihito OKAZAKI, Masanobu YUKUTAKE, Takashi ISHIGAKI, Keiichi KOSAKA, Teruo MOURI, Kazuaki CHAYAMA

広島大学病院消化器・代謝内科

Gastroenterology and Metabolism, Hiroshima University Hospital

キーワード :

【目的】
早期慢性膵炎の概念が臨床診断基準に取り入れられ,慢性膵炎の病期が考慮されるようになったが,診断の中心は画像所見であり,膵実質の脱落や線維化などの組織学的な進行度は十分反映されてはいない.今回,Real-time Tissue Elastography(RTE)を用いて膵の硬さを測定し,手術標本との対比を行い,線維化の程度が評価可能かどうかを検討した.
【方法】
術前にRTEを施行した膵切除症例30例(慢性膵炎8例,通常型膵癌10例,膵嚢胞性腫瘍4例,神経内分泌腫瘍3例,その他5例)を対象とした.超音波装置はHI VISION Ascendus(Hitachi-Aloka Medical)を使用した.RTEは心窩部横走査で腹部大動脈波による組織の変形を利用して行った.Strain Histogram計測機能を用いて特徴量を算出し,相対ひずみ平均値(MEAN),低ひずみ領域の占める面積比率(%AREA),複雑度(COMP),肝線維化評価に使用されるLiver Fibrosis Index(LF Index)を評価した.次に,RTEを施行した領域の切除標本でMasson Trichrome染色を行い,40倍視野中に占める膠原線維と腺房細胞の割合を,画像診断ソフト(Image J)を用いてそれぞれ算出した.ランダムに10ヵ所を選択し(くさび状生検では5ヵ所),その平均値とRTEで得られたMEAN,%AREA,COMP,LF Indexとの相関を検討した.さらに,臨床項目との関係も検討した.2変数の相関はSpearman順位相関係数,2変数の比較検定にはMann-Whitney U検定を使用し,P値が0.01未満を有意差ありとした.
【結果】
切除標本で線維化のない症例は,RTEでは背景膵は均一に薄緑色に表示されたのに対して,線維化の多い症例(慢性膵炎や膵頭部癌)では硬い青色の領域が増え,まだら状に表示された.膠原線維の割合とMEAN,%AREA,COMP,LF Indexの相関は,相関係数(P値)がそれぞれ-0.67(P<0.001),0.68(P<0.001),0.44(P=0.012),0.67(P<0.001)であった.腺房細胞との相関は,相関係数(P値)がそれぞれ0.72(P<0.001),-0.72(P<0.001),-0.26(P=0.097),-0.64(P<0.001)であった.%AREA値と各臨床項目を比較すると,腹痛,飲酒歴,喫煙歴,糖尿病ありの群が,なしの群に比較して有意に%AREA値が高値であった.年齢,PDF試験の値と%AREA値には有意な相関は認められなかった.
【結語】
RTEを用いて膵の線維化を評価できる可能性が示された.今後,多数例の早期を含めた慢性膵炎での評価が必要である.