Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:基礎 奨励賞

(S408)

超音波照射が神経膠芽腫細胞U-87MGの増殖に及ぼす影響に関する基礎検討

Basic study on effect of ultrasound exposure on the proliferation curves of glioblastoma cell U-87MG

渡邉 晶子, 岩城 咲乃, 薬袋 正恒, 西村 裕之, 竹内 真一

Akiko WATANABE, Sakino IWASHIRO, Masatsune MINAI, Hiroyuki NISHIMURA, Shinichi TAKEUCHI

桐蔭横浜大学大学院工学研究科医用工学専攻

Graduate School of Biomedical Engineering, Toin University of Yokohama

キーワード :

【はじめに】
近年,脳腫瘍の治療に高密度焦点式超音波HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)治療が使用されている.強力超音波をがん細胞上に集束させ,熱によって凝固性のネクローシスを引き起こす.経頭蓋的な低侵襲治療であり,放射線治療と違って繰り返し治療が可能な利点もある.その一方で,ネクローシスによる炎症反応で,がん細胞の周囲にある正常細胞にもダメージを与える可能性も危惧される.超音波を利用して,悪性度が高い浸潤性の脳腫瘍を治療するためには,新しい技術の開発が必要である.我々の研究室では,超音波照射による脳腫瘍細胞のアポトーシス細胞死への誘導を脳腫瘍の治療に利用するための検討を行っている.アポトーシスならば炎症反応を誘発しないので,周囲の正常細胞へのダメージを抑えることができると考えたからである.今回は,超音波照射が脳腫瘍細胞の増殖に及ぼす影響について検討した結果を報告する.
【実験方法】
実験には,脳腫瘍細胞の一種である神経膠芽腫細胞株U-87MGを使用した.U-87MGを当研究室で開発した超音波照射用音響窓付き細胞培養フラスコに播種し,Minimum Essential Medium(10%牛胎児血清,1% ペニシリンストレプトマイシン含有)を加えてCO2インキュベーター(5% CO2, 37℃)内に静置して培養を行った.次に当研究室製の超音波照射システムを用いて,超音波照射用音響窓付き細胞培養フラスコに播種したU-87MGに向けて20分間の超音波照射を行った.このシステムは,水槽底部に装着されたステンレス振動板を共振周波数40 kHzのランジュバン振動子で振動させ,水槽中に定在波を発生させる.実験システムのブロック図をFig. 1(a) に示す.超音波照射直後から8時間後までのU-87MGの細胞数を2時間毎に数え,超音波エネルギーが細胞に与える影響を増殖率の測定結果から評価した.測定結果の一例をFig. 1 (b) に示す.
【結果】
超音波照射直後の生細胞数は,超音波に曝していないネガティブコントロール(以下コントロール)の細胞とほぼ同じ数であった.しかし2時間経過後より,超音波曝露した細胞の生細胞数がコントロールの細胞数を大きく下回り,30から40% 程度にまで減少した.この増殖率の測定結果から,超音波によってU-87MGの増殖率を抑制することができる可能性が示唆された.