Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 整形外科
パネルディスカッション19 <治療に活かす> 整形外科領域の超音波:診断から治療まで使い倒す

(S394)

整形外科診療における超音波の活用方法:診断から治療へ

Applications of Ultrasound in Orthopedic Medicine: Diagnosis and Intervention

皆川 洋至

Hiroshi MINAGAWA

城東整形外科

Orthopedics, Johto Orthopedic Clinic

キーワード :

【レントゲン神話】
最も広く普及している単純X線写真は,すでに100年以上の歴史を持ち,描出される骨で病態を考える整形外科学の基盤を築き上げてきた.単純X線写真しか頼れなかった時代,徹底した骨教育を叩き込まれた整形外科医は,完全に洗脳された融通の利かない骨頭(ほねあたま)になっている人が多い.一般に,外来画像診断の第一選択は「まず,レントゲン」単純X線写真である.その理由は,画像診断装置の中で最も歴史が古く,最も広く一般に普及し,骨を中心に病態を考える整形外科学の基本だからである.骨折診断のgold standardは単純X線写真と一般に理解されているが,肋骨骨折,成長期の裂離骨折,疲労骨折などX線診断できない骨折は実際非常に多い.骨同士が重なる部分が読影の盲点になるからである.限界があることを頭の片隅に置いていなければ,評価や判断を誤ることにつながる.患者さんを安心させる方便として使うことはあっても,安易に「骨に異常ありません」と言ってはならない.
【静止画頭の整形外科医】
単純X線写真ばかりでなく,広く使われているCT,MRIにも共通の弱点がある.いずれも静止画ということである.一般に,静止画像の読影では正常構造と異なる所見を異常所見とみなす.本来,究極の病名は病態生理に基づくものであるが,整形外科では骨折,脱臼,腱・靱帯断裂など静止画所見をそのまま病名として扱っている場合が多い.しかし異常所見があっても痛みや機能障害がないことが珍しくないことが分かってきた.これは,静止画所見だけでは病態を十分説明しきれていないこと意味する.運動器だからこそ動きから解明できる病態は数多く存在しているはずである.時間分解能に優れた超音波は,リアルタイムな動画以外にも,ドプラ画像,エラスト画像といった画像表現を可能にした.静止画だけで考えない発想の転換が必要な時代なのである.
【超音波診療の時代】
現在の医療体制では,医者が患者の診療に集中できない.診療以外に割かれる時間が増え過ぎているからである.一生懸命真面目に診察している医者の患者待ち時間がどんどん長くなる.そこへ患者からクレームをつけられれば,診療時間を短縮せざるをえない.ここに3分診療と非難される悲しい現実がある.患者待ち時間を減らすため,外来予約制を導入する施設が増えているが,実際には予約を理由に患者の診療機会を奪っている.X線検査に頼った診断は検査待ちの時間を増やし,消炎鎮痛剤に頼った治療は治療期間を長引かせる.これからは即診断即治療,まさに超音波診療が基本スタイルの時代になる.
【次世代のカギは融合】
100年の歴史を歩んできた単純X線写真には,もはや画質に関する目新しい進歩がない.一方,まだ30年の歴史であるCT,MRI,超音波に関しては,10年前の画像が見る気もしないほど進歩が著しい.想定内の優れた技術が今後も次々に生まれてくることは確実であろう.しかし,壁を突破する画期的なアイディアは想定外のところから生まれる.CT,MRI,超音波それぞれの開発が完全に縦割りであること,臨床現場と開発が目指す画像には大きなギャップがあることが想定外の画期的な進歩を妨げている.次世代の画像診断装置とは,患者満足度が高く,医療費抑制という時代の流れに沿い,イメージモダリティの融合を効率よく達成したものであろう.