Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション16 <治療に活かす> 動脈硬化超音波診断の最前線

(S386)

動脈壁の局所弾性特性の超音波測定

Ultrasonic Measurement of Regional Elasticity of Arterial Wall

長谷川 英之1, 2, 金井 浩1, 2

Hideyuki HASEGAWA1, 2, Hiroshi KANAI1, 2

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学大学院工学研究科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

動脈硬化診断において,動脈壁の弾性特性計測は有用であり,臨床でも広く用いられている.代表的なものとして脈波伝播速度[1]およびスティフネスパラメータ[2]の計測が挙げられる.動脈硬化症は経時変化の観察が重要であることから,非侵襲的で繰り返し計測が用意なこれらの方法は有用なツールとなりうる.前者は,横波(脈波)の伝播速度が血管壁の弾性特性に依存することを利用したもので,後者は心一拍内の血圧上昇による血管壁のひずみ(直径変化)を超音波計測して弾性特性を計測するものである.空間分解能については,脈波伝播速度法では伝播速度を計測する2点間距離数十cmの平均的な弾性特性,スティフネスパラメータについては超音波断層像のスライス厚内での円周方向の平均的な弾性特性を計測していることになる.
脈波伝播速度は,動脈壁の弾性特性以外に,血液の密度,血管内直径,壁厚にも依存するため,脈波伝播速度から血管壁弾性率を推定するにはこれらの量も計測する必要がある.スティフネスパラメータの場合は,脈圧を測定してそれを血管壁の応力と仮定することで,超音波計測した血管壁の円周方向のひずみ弾性特性(スティフネスパラメータ)を算出している.このように,計測量から弾性率を算出するためには,一般的に動脈壁の形状や応力分布を仮定する必要がある.弾性率の定量計測という観点から最も有望と思われるものとして,近年開発された音響放射圧により局所的にずり波(横波)を発生させてその伝播速度(ずり弾性率と血管壁の密度に依存)から密度を仮定しずり弾性率を推定する手法[3]が挙げられる.しかし,この手法では,空間分解能がずり波の波長に制限されることと,比較的強い音圧を印加する必要がある(不安定プラークへの影響等),という問題はあると思われる.
我々は,血圧上昇による血管壁のひずみを計測するアプローチにおいて,ひずみ計測における空間分解能を,スティフネスパラメータにおける円周全体の平均値(直径変化の計測)から血管壁厚み方向数百ミクロン(局所厚み変化の計測)に向上させる手法を開発した[4,5].計測した局所ひずみ分布から,弾性率を推定するためには,壁内の応力分布を得ることが必要であるが,現状では困難である.したがって,応力については径方向に均一もしくは円筒管の応力分布を仮定する必要があるが,計測した局所ひずみは局所動脈壁の血圧変化による変形し易さを定量的に示しており,動脈病変局所の可動性を評価する指標(脈圧で規格化しているため,脈圧が変動しても比較が可能)として,動脈硬化病変の易破裂性診断などに有用な指標となりうると考えている.本報告では,本研究グループにおいて研究開発を行っている動脈壁の局所ひずみ・弾性特性計測法について述べる.
【参考文献】
[1]長谷川元治: 慈医誌,1970.
[2]K. Hayashi, et al.: J Biomech, 1980.
[3]M. Couade, et al.: Ultrasound Med Biol, 2010.
[4]H. Kanai, et al.: IEEE Trans UFFC, 1996.
[5]H. Hasegawa and H. Kanai: IEEE Trans UFFC, 2008.