Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション16 <治療に活かす> 動脈硬化超音波診断の最前線

(S385)

Arteriosclerosisと後負荷:血管スティッフネスと実効大動脈エラスタンスによる評価

Relationship between arteriosclerosis and afterload:evaluation by stiffness parameter and effective arterial elastance (Ea)

仁木 清美

Kiyomi NIKI

東京都市大学工学部・生体医工学科

Department of Biomedical Engineering, Tokyo City University

キーワード :

【背景】
Arteriosclerosisによる血管スティッフネスの上昇は後負荷の増大をもたらし,心不全発症のリスクを高める.しかし,実際の後負荷は血管のスティッフネスと末梢血管抵抗(TVR)により決定されるものであり,後負荷における両者の関係を明らかにする必要がある.実効大動脈エラスタンス(Ea)は血管スティッフネスと末梢血管抵抗を統合した指標として提唱されたものであり,心臓にかかる後負荷を総合的に評価することができる.Eaは1回拍出量 (SV)および収縮末期圧(ESP)から,Ea=ESP/SVと定義されるが,これらの値は超音波技術を用いて非侵襲的に計測できる.そこで加齢に伴うEa,血管スティッフネス(β),末梢血管抵抗の変化と末梢血管抵抗を変化させた時のEa,βの変化について検討した.
【対象および方法】
20-75歳までの左室駆出機能に異常を認めない成人男性33人(36±14歳)を対象とした.超音波装置を用いてエコートラッキング法により頸動脈の血管径変化,およびカフ型血圧計により上腕動脈の血圧を計測し,β(β=ln(Ps/Pd)/[(Ds/Dd)-1])を計算した(Ps:収縮期圧,Pd:拡張期圧,Ds:最大血管径,Dd:最少血管径).また,血管径変化波形を血圧値で較正して血圧波形を求め,収縮末期圧(ESP)を得た.さらに心エコー検査にて1回拍出量 (SV),心拍出量(CO),を計測した.以上のデータよりEa, TVR=[(mean P - RAP)/CO]×80 (meanP:平均血圧,RAP:右房圧)を計算した.被験者のうち20人においては5分間の下肢冷却による寒冷負荷を行い,末梢血管抵抗を上昇させたときのEa,βを計測した.
【結果】
Ea,βの値はそれぞれ1.33±0.25 mmHg/ml, 9.5±3.4であり,両者とも年齢に相関を認めた(Ea: r=0.42, p<0.05,β: r=0.76, p<0.0001)が,TVR(1270±250 dyness/cm5)は相関を認めなかった.Eaはβ,TVRのいずれとも相関を認めたが相関係数はTVRのほうが高かった(vs β: r=0.41, p<0.05, vs TVR: r=0.81, p<0.0001).また,TVRはβとは相関がなかった.寒冷負荷により収縮・拡張期末期血圧およびEa,TVRは有意な上昇を認めた.βは有意な変化を認めなかったが,Eaの変化率は負荷前のβと相関した(r=0.52, p<0.03).
【結論】
Eaは血管スティッフネスと末梢血管抵抗のいずれとも相関するが,末梢血管抵抗との相関の方が強い.動脈硬化による血管スティッフネスの増大は末梢血管抵抗の増大による後負荷の増加を増大させる.動脈硬化による後負荷の評価にはEaも同時に計測するべきである.