Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム14 <教育に活かす> 理想とする血管エコー報告書の書き方

(S377)

下肢動脈エコー報告書の書き方

How to write a report of duplex ultrasound of the lower extremitiesin PAD

山本 哲也1, 松村 誠2

Tetsuya YAMAMOTO1, Makoto MATUMURA2

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

キーワード :

【はじめに】
報告書は検査の最終段階として重要であり,最も伝えたい内容を簡潔な文章で報告する必要がある.例えエコー検査が見落としなく完璧に実施されたとしても,得られた情報を正しく伝達できなければ,無駄な検査になってしまう.私自身,依頼医が満足できる理想的な報告書が記載できているか不安は残るが,普段注意している点や工夫している点などを述べる.
【理想的な報告書】
下肢動脈領域での理想的な報告書とは,一読して,あるいは一目で病変(病態)の全体像が把握でき,「依頼医が必要としている情報」と「検査者が伝えたい情報」が簡潔な文章で記載されていることだと思う.
【報告書作成のコツとポイント】
1.依頼目的を把握する:患者情報を取得し検査目的をしっかり理解しておくことが大切である.検査目的が理解できないような場合には,依頼医に直接,連絡を取り確認すべきである.症例によっては下肢全体を診るのではなく,検査部位が限定される場合もあり,決して自己判断でスクリーニング的に実施すべきではない.目的がはっきりしなければ,当然,依頼医が求めている情報を提供できる可能性は低くなる.2.前回との比較を記載する:前回の検査所見と比較したコメントを付け加えることが望ましく,診療に役立つのは確実である.3.エコー検査以外では知り得ない情報を強調する:エコー検査の利点は可動性や血流情報(血流の有無,方向,速度)がリアルタイムに得られ,病変部の形態や性状が簡便に観察されることである.これらの情報は他の画像診断より優れ強調すべきポイントである.4.治療法を念頭に置いて記載する:外科的血行再建術と内科的(血管内)治療のいずれが選択されるのかを各種ガイドラインなど念頭に置いて記載する.さらに術式(人工血管置換術やreversed vein graft, in situ vein graftなどの自家静脈グラフトによるバイパス術)を考慮した付加価値の高い情報を提供できるよう心がけたい.また病変部だけの所見ではなく,アクセスルートや末梢動脈の開存性などの情報も重要である.5.シェーマを多用する:エコーでは他の画像診断と比較し,全体像を捉え難い欠点がある.特に下肢動脈領域では観察する範囲が広く,その傾向は高い.これを補うためには病変の全体像を一目で理解できるシェーマの記載が必須である.注意する点としては,解剖の位置関係を理解しやすく図示することである.
【報告書作成時の注意点】
1.検査直後に記入する:検査で得られた情報を漏れなく伝えるためには,検査終了直後に報告書を作成すべきである.特に下肢動脈では観察範囲が広く,多岐にわたる病変例では予め簡単なメモ書きを用意し,所見を記入しながら検査を進めると記載漏れを防止できる.2.レポート内容の信頼性:消化管ガスや肥満などにより,画像が不鮮明になることがある.画質の程度は所見の信頼度を示すものであり,画質不良な際には記載すべきである.また,PSVやPSVRなどの血流速度情報が正確に測定されているのか?狭窄率が正確に算出されているのか?などデータの信頼性に関する情報は重要であり,参考値である場合はその旨を明記したい.3.記載ミスを無くす.検査の見落としが無いにしても,所見の記載ミスは経験年数に関わらず発生する可能性がある.たとえば,右と左の一字の記載ミスは,一見よくある些細なものであるが,実は重大なミスであることを認識すべきである.
【おわりに】
理想的な報告書は施設や診療科によって若干異なる.普段記載している報告書の内容や文章,図表やイラストを一度見直し,診断医や臨床医が理想とする報告書について確認していただきたい.