Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション12 <教育に活かす> 百花繚乱! 乳房超音波検査用語

(S364)

形状と境界の表現:腫瘤と非腫瘤の区別を含めて(日本乳腺甲状腺超音波医学会の現状)

Expression of shape and margin in JABTS

渡辺 隆紀

Takanori WATANABE

国立病院機構仙台医療センター乳腺外科

BREAST SURGERY, SENDAI MEDICAL CENTER

キーワード :

JABTSでは,病変を腫瘤(腫瘤像形成性病変)と非腫瘤性病変(腫瘤像非形成性病変)に分類している.本企画のテーマである「形状と境界」は腫瘤に関する所見用語である.形状は,腫瘤全体から受ける形の印象を言い,円形・楕円形,分葉形,多角形,不整形の4つに分類される.定義としては,“くびれ”と“かど”を用いて,どちらもないものを円形・楕円形,両方あるものを不整形,くびれだけがあるものを分葉形,かどだけがあるものを多角形と定義している.境界とは腫瘤と非腫瘤部との接する面と定義される.関連する用語として,辺縁と周辺,さらに境界部がある.辺縁は境界付近の腫瘤部分,周辺は腫瘤に近い非腫瘤部分のことである.境界が不明瞭な場合は辺縁,境界,周辺をわけることができないので,これらを合わせて境界部と呼んでいる.境界の性状として,境界明瞭,境界不明瞭,評価困難に別れ,境界明瞭には明瞭平滑と明瞭粗がある.また,境界部高エコー像(halo)は,腫瘤と周辺組織との境界部で発生する周囲(脂肪)組織より高エコー像であるが,この所見が認められる場合は境界不明瞭と評価するのが妥当である.腫瘤と非腫瘤性病変の区別も本企画のテーマであるが,JABTSの定義では,腫瘤とは周囲組織とは異なった成分が塊をなしていると考えられる像のことであり,異なる2方向の断面で腫瘤と認識できることが必須である.非腫瘤性病変とは,腫瘤像として認識困難な病変のことである.“認識”という言葉が使用されているのは,腫瘤と非腫瘤性病変の区別は主観的なものだからである.従って,同一病変でも人によって認識が異なる場合があることも想定されている.非腫瘤性病変はさらに,乳管の拡張,乳腺内の低エコー域,構築の乱れ,多発小嚢胞像に分類されるが,現在JABTSではガイドラインの改訂作業を行っており,用語の名称や定義が変更される可能性がある.改訂に当たっては他学会とも情報を共有しながら,今後なるべく同じ方向に収束させる方向で進行している.発表当日は最新の状況を報告する予定である.今回の企画が提案された背景には,本邦の各学会の認識が異なるという点があると思われるが,この点に関してはまず非腫瘤性病変での他学会との情報のやりとりが始まっており,今後一つの方向に収束していくための取り組みが開始されたと考えている.しかし,世界的には非腫瘤性病変の概念は今のところ本邦のみの概念であり,このことも重大な問題である.今後我が国の分類概念が,世界的に受け入れられるようにするにはどうすれ良いのかという議論を始めていく必要があると考えられる.