榎戸 克年¹, 渡邊 知映¹, 角田 博子², 戸崎 光宏³, 中村 清吾¹

Katsutoshi ENOKIDO¹, Chie WATANABE¹, Hiroko TSUNODA², Mitsuhiro TOZAKI³, Seigo NAKAMURA¹

¹昭和大学病院乳腺外科, ²聖路加国際病院放射線科, ³亀田総合病院乳腺科

¹Breast Surgical Oncology, Showa University Hospital, ²Radiology, St. Luke’s International Hospital, ³Breast Center, Kameda Medical Center

キーワード :

乳腺腫瘤の超音波診断において，海外からのShearWave Elastography（SWE）の報告が増えており，国内でもその認知度が高まっている．SWEでは，組織弾性をカラーマップと定量値で表示することができる特徴があり，組織弾性値が低い（軟らかい）病変は青，組織弾性値が高い（硬い）病変は黄〜赤で表示される．またプローブを静止した状態で，組織を圧迫することなく組織弾性を評価できるため，施行者の手技に依存せず，再現性が高い画像診断が可能であることが報告されている．定量値を用いた良悪性の鑑別がSWEの特徴であるが，定量値を測定しなくても，カラーマップを視覚的に評価することで診断が可能であることが報告されている．Tozakiらは，表示されるカラーマップのパターンを4つに分類し，均一に青く表示される（パターン1）と複数の縦走するアーチファクト（パターン2）を良性病変，腫瘍の境界部に色が表示される（パターン3）と腫瘍内部に不均一に色が表示される（パターン4）を悪性病変としたパターン分類の有用性を報告した．今回我々は多施設で症例を集積し，従来の定量値による良悪性の鑑別とともにパターン分類を用いた鑑別の有用性について検討を行った．
【対象/方法】
乳房超音波検査で乳房腫瘤を認めた症例に対してSWE画像の所見（定量値，パターン分類）を前向きに集積し，手術もしくは細胞診・針生検で確定した病理組織像との相関を検討した．
【結果】
平均年齢は49.7歳（23〜85歳），病理組織結果は良性病変138例，悪性病変175例であった．良性病変における定量値は平均53.9kPa（3.4〜300），悪性病変は平均138.9kPa（7.0〜300）であった．パターン分類は2者間の一致度（κ係数）0.63，分類が一致した313例の良性と悪性の割合を表に示す（表1）．
【考察】
今回の検討では，パターン分類での鑑別の有用が示唆されたが，悪性病変でもパターン1で軟らかい病変と判断される症例がある．今後はその原因の検討とともにSWEの診断基準の確立のために症例の集積と検討が必要である．