Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 腎泌尿器
コントラバーシ2 <診療に活かす> 腎腫瘍診断のベストは? :US vs CT/MR

(S348)

腎腫瘍診断 CT/MRI 1:① 嚢胞性病変の鑑別診断/② 透析患者のスクリーニングと透析腎病変の鑑別診断

① Differential diagnosis of cystic renal lesion/② Screening of dialysis patients for renal lesion and its differential diagnosis

秋田 大宇, 陣崎 雅弘, 大熊 潔

Hirotaka AKITA, Masahiro JINZAKI, Kiyoshi OHKUMA

慶應義塾大学医学部放射線診断科

Diagnostic Radiology, Keio University School of Medicine

キーワード :

1.腎嚢胞性病変の評価には,良悪性の鑑別と治療方針を考慮したBosniak分類が基本である.嚢胞壁や隔壁の性状によって,当初はカテゴリーⅠからⅣの4段階に分類されていたが,現在ではカテゴリーⅡとⅢの間に,カテゴリーⅡFが加えられた5段階分類が一般的となっている.ヘリカルCT時代には,Bosniak分類に基づく腎細胞癌の診断能は十分でないとする報告も見られたが,multidetector-row CTの普及により,より薄いスライス厚によるダイナミック撮像が可能になったため,診断能の向上が得られた.また元来Bosniak分類はCT所見に基づいたものであったが,現在では造影MRIにも適用可能と考えられている.造影MRIではそのコントラスト分解能の高さゆえ,しばしば隔壁の数や厚さあるいは増強効果をより鋭敏に捉えることができ,より正確な診断に期待が持てる.また被曝がないため,画像での経過観察が必要とされるカテゴリーⅡF病変に対する経過観察 (特に若年者)にも有用である.経過観察では,嚢胞性病変のサイズの変化よりも,嚢胞壁や隔壁の肥厚といった形態の変化に着目することが重要であるが,CTやMRIは客観性に優れており,経時的変化を捉えることが比較的容易である.

2.透析の合併症としてacquired cystic disease of the kidney (ACDK)が知られているが,5-10年の透析歴で実に90%以上の患者に発生すると言われる.ACDKには腎細胞癌の発生率が高く,そのスクリーニングが重要である.しかしACDKでは多発する嚢胞の影響で,しばしば腎細胞癌の検出が困難となる.また嚢胞の中には出血性嚢胞も少なからず見られ,腎細胞癌との鑑別を要する.CTでは造影剤による増強効果の有無で,腎細胞癌と嚢胞を鑑別することが基本となるが,透析腎に発生する腎細胞癌には乏血性腫瘍の頻度が高く,増強効果の判断が困難なことも少なくない.一方MRIではnephrogenic systemic fibrosisの問題から,透析患者に対しては現在造影剤を用いることができない.しかしMRIは被曝がなく,繰り返し行われるスクリーニングとして有用な可能性がある.これまでACDKに合併する腎細胞癌のMRI所見の報告は少なく,我々はこれを検討したので診断における注意点とともに述べたい.