Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 腎泌尿器
パネルディスカッション3 <科学に活かす> 超音波を用いた腎・泌尿器領域の各臓器血流測定とその意義

(S345)

精巣血流と精巣疾患〜急性陰嚢症を中心に〜

Impact of color doppler ultrasonography on acute scrotum

守屋 仁彦1, 西田 睦2, 三井 貴彦1, 橘田 岳也1, 中村 美智子1, 菅野 由岐子1, 今 雅史1, 野々村 克也1

Kimihiko MORIYA1, Mutsumi NISHIDA2, Takahiko MITSUI1, Takeya KITTA1, Michiko NAKAMURA1, Yukiko KANNO1, Masafumi KON1, Katsuya NONOMURA1

1北海道大学腎泌尿器外科学分野, 2北海道大学病院検査・輸血部/超音波センター

1Department of Renal and Genitourinary Surgery, Hokkaido University, 2Diagnositic Center for Sonography/Division of Clinical Laboratory and Transfusion, Hokkaido University Hospital

キーワード :

急性陰嚢症は陰嚢内容の炎症を原因として陰嚢腫大を呈する疾患の総称であり,精索捻転,精巣垂捻転,精巣上体炎,特発性陰嚢浮腫などの鑑別が必要である.精索捻転は,精巣血管の血流が途絶するために,早急な血流の再開がなされなければ精巣の壊死をきたす.この疾患を見逃さないため急性陰嚢症に対する治療の原則は緊急手術とされ,発症後12〜24時間以内の整復術が推奨されている.その反面,精巣垂捻転,精巣上体炎,特発性陰嚢浮腫などは保存的治療が第一選択となるために,急性陰嚢症を診察する場合には限られた時間で手術不要例を判断する必要に迫られる.陰嚢内容の病態を把握するための画像診断としては超音波検査やMRI,核医学的検査などがあげられるが,その中でもカラードプラを用いた超音波検査は,非侵襲的であり,即時に施行可能であること,精巣の血流がリアルタイムで観察可能であるという利点があり,時間制限のある中での検査としては極めて有用である.2000年以降当科で経験した急性陰嚢症13例では,精索捻転症であった4例ではいずれもカラードプラにて血流信号が確認できなかった.その一方で,血流信号が確認できた9症例はいずれも手術所見あるいはその後の臨床経過から精索捻転は否定的であった.しかしながら,そのうち5例では手術が回避されたものの残る4例では手術が行われていた.その理由は炎症が高度であり,エコーのみの所見では精索捻転を完全に否定が出来ないことが主たる理由であった.超音波検査という性質上検査施行者の経験に左右される検査であること,精巣の虚血に伴い周辺組織では逆に血流の増加がみられるため精巣自体の血流信号と誤認されうること,捻転の程度が軽い症例や発症から比較的早期の捻転では精巣には血流が保たれているもののその後徐々に血流が低下するといった経時的変化があり,血流信号を確認できたことが精索捻転を完全に否定することはできないことなどが報告され,カラードプラ所見を過信することにより精索捻転を見逃す可能性が指摘されている.そのため,カラードプラを用いた超音波検査で精巣の血流信号が確認される症例で実際に緊急手術が回避可能か否かについては意見の分かれるところである1).このような観点から,現在では臨床経過から精索捻転が否定できない場合には健側精巣との比較を行うこと,経時的に繰り返して検査を行うことが推奨されている.また,最近ではカラードプラによる精巣内の血流信号の有無を検査するのみではなく,精巣内の血流信号の波形解析を行う2),あるいは精巣内の血流信号のみに着目するのではなく,血流信号に着目しながら精索を同定し,捻転自体を確認する方法(Whirlpool sign)が報告されている3).しかしながら,手技が煩雑になるにつれて検査施行者の技量による差がみられるため3),高度なトレーニングを受けた検者が救急医療現場に必要となる.本発表では当科での経験を踏まえながら,急性陰嚢症における血流測定の意義について文献的考察を交えて報告する.
1)Allen TD, et al. Shortcomings of color Doppler sonography in the diagnosis of testicular torsion. J Urol. 1995
2)Altinkilic B, et al. Detection of normal intratesticular perfusion using colour-coded duplex sonography obviates the need for scrotal exploration in patients with clinical suspicion of testicular torsion. J Urol. 2012
3)Kalfa N, V et al. Multicenter assessment of ultrasound of the spermatic cord in children with acute scrotum. J Urol. 2007