Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 腎泌尿器
シンポジウム12 <診療に活かす> 末期腎不全診療に超音波を活かす

(S340)

腎移植診療における超音波検査

Ultrasonography for kidney transplantation

齋藤 満

Mitsuru SAITO

秋田大学大学院学系研究科腎泌尿器科学講座

Department of Urology, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

【緒言】
超音波検査は簡便で非侵襲的であり,短時間で多くの臨床情報が得られることから腎移植診療においても頻用されている.腎移植領域では移植腎血流,水腎症,移植腎被膜下血腫,リンパ嚢腫,仮性動脈瘤,(移植腎または固有腎の)腎原発悪性腫瘍,下部尿路通過障害などの有無を観察する.移植後早期における移植腎への血流低下は移植腎の予後に大きく関与することから,この時期の移植腎血流の評価は特に重要である.拒絶反応が起きた場合には腎皮質の間質の浮腫が起き,pulsatility index(PI)やresidence index(RI)が上昇するが,定期的なモニタリングを行うことで早期発見・治療につながる可能性がある.最近では必要時にすぐに走査できるように,ポータブルデバイスであるVscan(GEヘルスケア・ジャパン株式会社,東京都)という汎用超音波画像診断装置を常に携帯し診療にあたっている.術後の腎移植患者用の個室は比較的狭いため,US機器を部屋へ搬入するよりも簡便なので演者らは重用している.当科で最近行っている移植術中内・外腸骨動脈超音波検査を紹介する.
【背景】
一般に移植腎と吻合する動脈としては内または外腸骨動脈が使用されるが,十分な血流があればどちらの動脈を用いてもよいとされる.当科では①血管吻合が容易(内腸骨動脈は端々吻合,外腸骨動脈は端側吻合),②外腸骨動脈選択時は同動脈を一時的に遮断することによる下肢の虚血に配慮が必要である,ことなどから内腸骨動脈を第一選択としている.通常,術前CTで両動脈の走行(体表からの深さ),石灰化の有無,内口径などの情報から,予めどちらの動脈を使用するかを決めておくが,内腸骨動脈選択時に予想より血流が弱い場合は,吻合を外腸骨動脈に変更する必要がある.内腸骨動脈の血流が不十分であることが同血管周囲の剥離操作を行う前に明らかとなれば,不要な手術侵襲を回避できる可能性がある.
【対象】
対象は平成24年9月以降に当院で腎移植療法を受けた生体腎移植レシピエント7名.移植腎床作成時に総腸骨動脈から内・外腸骨動脈への分岐部を明らかにしたのち,分岐してすぐの部位でリニア型の超音波プローブを両動脈表面にあてPI,RIなどを測定し,動脈内腔の状態並びに血流の評価を行った.使用機器はNemio MX iSTYLE(TOSHIBAメディカル社製 栃木県大田原市)を使用し,プローブはPLM-703AT(7.5MHz)を使用した.
【結果】
全例で右腸骨窩に腎移植を施行した.術前CT所見から6例で内腸骨動脈を,1例で外腸骨動脈を吻合する動脈として選択した.内腸骨動脈のPIは外腸骨動脈と比較して有意に高く(3.01±0.57 vs. 2.34±0.42, p=0.043),RIは同等(0.98±0.04 vs. 0.93±0.08, p=0.24)であった.1例で術中USによる血流評価により吻合する動脈を外腸骨動脈へと変更した.全例で移植直後から良好な利尿が得られ,移植早期の移植腎機能は良好であった.
【結語】
術中USでの内・外腸骨動脈の血流評価は移植腎動脈と吻合する動脈を選択するうえで一助となり得ると思われた.