小路 直, 朝長 哲朗, 金 伯士, 中野 まゆら, 内田 豊昭

Sunao SHOJI, Tetsuro TOMONAGA, Hakushi KIM, Mayura NAKANO, Toyoaki UCHIDA

東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科

Department of Urology, Tokai University Hachioji Hospital

キーワード :

【背景】
高密度焦点式超音波療法 （high-intensity focused ultrasound，HIFU）は，高エネルギー超音波を生体内における焦点領域に収束し，その領域における組織を熱変性（80-98℃）とCavitation現象により破壊することで，治療効果を得るものである．
【目的】
限局性前立腺癌に対するHIFUの長期成績について検討した．
【方法】
対象は，1999年以降の12年間に，限局性前立腺癌に対してHIFUを施行した872症例．治療は，Sonablate device （Focus Surgery, IN, USA）を用いて施行した．治療成績は，術後6ヶ月後の前立腺生検およびPhoenix ASTROの効果判定基準に基づき，統計学的に検討した．
【結果】
対象患者の平均年齢は68歳，対象症例のClinical StageはT1c: 59％，T2: 37％，T3: 4％，平均PSA値は10.3 ng/ml，平均Gleason scoreは6.4，前立腺癌の悪性度分類（D’Amico risk criteria）では，低リスク群 225例（26％），中リスク群 374例（43％），高リスク群 273例（31％）と分類された．術前内分泌療法は，515例（59％）に施行された．平均前立腺体積は23.4 ml，平均手術時間は127分間，平均経過観察期間は50ヶ月間であった．リスク群別の5年生化学的非再発生存率は，低リスク群 78％，中リスク群 62％，高リスク群 47％であった．Sonablate deviceは，機器改良が行われてきた．これにより，初期deviceにおけるリスク群別の5年生化学的非再発生存率は，低リスク群 72％，中リスク群 50％，高リスク群 42％であったが，最新deviceでは，低リスク群 95％，中リスク群 77％，高リスク群 60％と，治療効果の向上が認められた（p＜0.0001）．全症例における癌特異的生存率は，99.9％であった．合併症は，尿道狭窄（Grade1-2）が18.3％，術後6，12，24ヶ月目における勃起不全が48％，49％，29％，尿失禁（Grade1）が2.1％，尿道直腸瘻が0.6％に認められた．
【結論】
前立腺癌に対するHIFUは，低侵襲であり，臨床効果と患者のquality of lifeを両立できる治療法である．また，機器改良により，治療効果の向上が認められた．