Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 腎泌尿器
シンポジウム1 <診療に活かす> 新規applicationを駆使した泌尿器疾患診断・治療の最前線

(S336)

造影エコーを用いた腎腫瘍の診断

Diagnosis of renal mass with contrast-enhanced ultrasonography

陣崎 雅弘, 大熊 潔

Masahiro JINZAKI, Kiyoshi OHKUMA

慶応義塾大学医学部放射線診断科

Diagnostic Radiology, Keio University School of Medicine

キーワード :

【目的】
腎腫瘍の質的診断は近年の画像診断の進歩により精度が向上しているが,喘息患者や腎機能低下患者では造影CT,造影MRが施行しにくい.また,Bosniak分類のII, IIF, IIIは判定が困難なことがある.今回は,喘息患者,腎機能低下患者,嚢胞性腎腫瘍患者で腎腫瘍が疑われた場合に造影エコーを施行し,その有用性を検討した.
【対象】
造影エコー法は腎腫瘍に対しては保険適応がないため,当施設の倫理委員会承認のもと,被験者からのInformed Consentを得て行なわれた.検査の候補になった20例のうち,同意が得られなかった2例を除く18例(男性15例,女性3例)を対象とした.内訳は,喘息患者1例,腎機能障害患者7例,嚢胞性腎腫瘍10例であり,患者平均年齢は62.8歳(41-81歳),腫瘍の平均サイズは3.0cm (1.0-7.5cm)であった.
【方法】
使用機種はGE LOGIQ E9およびLOGIQ S8.Bモード検査施行後,ソナゾイド(第一三共株式会社)を用手的に肘静脈から注入した.Amplitude Modulationモードで造影剤投与後40秒程度まで撮影し,必要に応じflash replenishment法を用いて1〜2回撮影し,病変のvascularityの有無を解析した.病理診断もしくは経過観察所見をgold standardとして,CT,MRと比較した造影エコーの有用性を検討した.
【結果】
喘息患者の1例は,他の検査で造影が行えず造影エコーが腎癌の確定診断ができた唯一の検査であった.腎機能障害患者6例中4例(透析腎2例,未透析の腎機能低下2例)では造影エコーにて明瞭な造影効果が得られ腎癌と診断され,3例は手術の結果腎癌であり,1例は他に癌があるためそちらの治療を優先し経過観察中である.他の2例(透析腎)は,造影がみられず嚢胞と判断し経過観察中である.腎機能障害患者群では,未透析の腎機能低下2例では造影エコーのみで確定診断をできた.また,透析腎4例のうち,造影エコーで造影がみられなかった2例では経過観察を行うことの確信度が増した.嚢胞性腎腫瘍は,1例が多房性嚢胞性腎癌,6例がBosniak III,4例がBosniak IIFであり,Bosniak IIFの1例は造影エコーにより単純嚢胞であることを確定できたが,他の10例はCT所見と比べて診断には変わりはなかった.
【結論】
喘息患者と腎機能障害患者に対して造影エコーは有用であった.嚢胞性腎腫瘍に対する有用性の判定は更なる検討を必要とする.