Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション18 <治療に活かす> 胎児治療の次のステップ:治療適応・術後管理に超音波をどのように応用していくか

(S326)

胎児脊髄髄膜瘤の出生前診断と胎児治療の適応

Prenatal diagnosis of the myelomeningocele for fetal surgery

和田 誠司1, 杉林 里佳1, 江川 真希子2, 住江 正大1, 左合 治彦3

Seiji WADA1, Rika SUGIBAYASHI1, Makiko EGAWA2, Masahiro SUMIE1, Haruhiko SAGO3

1国立成育医療研究センター周産期センター胎児診療科, 2東京医科歯科大学小児・周産期地域医療学, 3国立成育医療研究センター周産期センター

1Devision of Fetal Medicine, National Center of Child Health and Development, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Tokyo Medical and Dental University, 3Department of Maternal-Fetal and Neonatal Medicine, National Center of Child Health and Development

キーワード :

【背景と目的】
脊髄髄膜瘤(myelomeningocele: MMC)は開放型神経管欠損症の1つであり,背側に突出する脊髄が皮膚に被われていないことにより,病変部位より遠位の運動・知覚神経障害や膀胱・直腸障害を来す.また,キアリ奇形により脳幹の圧迫や脳脊髄循環の障害からの脳室拡大による中枢神経障害も併発する.胎児超音波検査では頭蓋所見もしくは脊椎病変からスクリーニングされる.頭蓋所見はレモンサインとよばれる前頭蓋の陥没所見,バナナサインと呼ばれる小脳の変形,後頭蓋窩の消失,脳室拡大,頭囲の短縮が特徴的で,これらの所見は妊娠20週前後からみられ,脊髄所見が描出出来なくてもスクリーニングが可能である.しかし我が国では母体血清マーカースクリーニング検査の普及率が低いこともあり,妊娠週数が30週前後の脳室拡大や水頭症の所見からスクリーニングされることが多いと考えられている.一方,胎児治療のこころみは1990年代より行われているが,2011年のThe New England journal of Medicineで報告されたMOMS(Management of Myelomeningocele Study)により一定の評価を受け,欧米のいくつかの施設では積極的に行われている.MOMSでの胎児治療の適応基準はMMCレベルがTh1-S1で後脳ヘルニアを伴う,母体年齢 18歳以上,実施週数が妊娠19週0日から妊娠25週6日,除外基準は多胎妊娠,MMC以外の胎児奇形,BMI>35,既往早産,既往子宮手術(古典的帝王切開)などであり,出生前の胎児スクリーニングと診断が胎児治療においては欠かすことができない.しかし,我が国ではMMCにおける出生前診断の状況は明らかでない.今回我々は当院を受診した胎児MMC患者においてスクリーニングされる契機となった超音波所見,その妊娠週数,精査における所見などを検討し,我が国で胎児治療を行うための問題点を検討することを目的とする.
【方法】
2002年から2011年までに当院で出生前診断を行った胎児MMC患者の56例においてスクリーニングされる契機となった超音波所見と診断週数,脊髄病変の部位,後脳ヘルニアの有無,合併奇形の有無について検討し,胎児治療の適応となり得た症例がどの程度存在したかを診療録を基に後方視的に検討した.
【結果】
異常所見を最初に見いだされた平均妊娠週数は27.3週(15-39週)で,その契機となった所見は水頭症・脳室拡大が32例 (57%),MMCが18例(32%),レモンサインまたはバナナサインが3例(5%)であった.MMCレベルの上端ががTh1-S1にあてはまる症例が43例(77%)で,後脳ヘルニアの所見を認めた症例は53例(95%)であり,最終的に胎児治療の適応となり得ると考えられた症例は11例(20%)であった.
【結論・考察】
我が国では欧米での報告に比較するとMMCと診断される週数が遅く,妊娠20週前後で得られるレモンサインやバナナサインなどの所見からスクリーニングされる症例が少ない.そのため胎児治療の適応となる症例が少なく,胎児超音波スクリーニングのシステムの問題を再検討する必要があると考えられた.