Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション18 <治療に活かす> 胎児治療の次のステップ:治療適応・術後管理に超音波をどのように応用していくか

(S325)

先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児治療と我が国のTOTAL trialへの参加について

Antenatal management of isolated left congenital diaphragmatic hernia and the randomized controlled TOTAL trial: Should we participate in TOTAL trial?

遠藤 誠之

Masayuki ENDO

大阪大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Osaka university

キーワード :

【背景】
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は外科的に修復が可能な疾患であるが,問題となるのは合併する肺の低形成であり,新生児期に肺高血圧・呼吸不全の原因になる.超音波による出生前診断率の向上また重症度の判定が可能になったことにより,CDHの症例が出生前から周産期センター等の基幹病院に集約化されてきたこと,また新生児管理の向上もあって,CDH罹患児の生存率は上がってきたが,依然死亡率は20−30%と高い.
【欧米での胎児治療の現状】
それに対して,UCSFのM. Harrisonらの胎児期子宮内直視下横隔膜閉鎖術,気管クリッピング術を経て,UZ LeuvenのJ. Deprestらの研究グループによって,胎児鏡下でのバルーン気管閉塞術が確立され,2004年には臨床応用された.これらの手技は,Fetoscopic Endoluminal Tracheal Occlusion (FETO)と命名されている.その治療効果機序としては,CDH症例のうち,特に超音波診断により重症肺低形成を伴うと診断された胎児の気管を,内視鏡下に留置バルーンで閉塞すること(Tracheal Occlusion: TO)によって,肺胞液が肺内に貯留し,肺が拡張膨大する.その効果により,気道・血管の発達が促され,肺の成長が促され,肺低形成を防ぐ.また,一定期間後の子宮内での気管閉塞の解除は,その後の適切な肺成熟を促す.Eurofetusを中心とした,FETO共同研究グループにより,2008年10月迄に重症肺低形成を伴うCDH症例210例にFETOが施行され,生存率の上昇,生後の合併症の低下を認めた.これらの効果を,より厳密に証明するために,2008年より,ランダム化比較試験(TOTAL trial)がEurofetusとカナダを中心に組織され,現在進行中である.さらに,米国を初め,諸外国がこのTOTALに参加する予定で準備が進められている.
【我が国での胎児治療の現状】
現在,我が国でも,国立成育医療研究センターを中心として,TOTAL trialに参加する方向で準備を進めており,これが日本における胎児治療プログラムになると考える.本講演では,CDHに対する超音波診断の現状と,FETOおよびTOTAL trialプロトコールについて詳述し,日本がその臨床試験に参加する上で,考慮すべき問題点を提起したい.