Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム7 <診療に活かす> 産婦人科領域超音波診断の再評価

(S317)

卵巣腫瘍パターン分類診断の再評価

Revaluation of the echo pattern classification of ovarian masses

田嶋 敦

Atsushi TAJIMA

順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Juntendo University Urayasu Hospital

キーワード :

超音波検査は簡便に非浸襲的に行うことができ,婦人科領域においても日常診療において必要不可欠な検査となっている.婦人科疾患の中で頻度の高い卵巣腫瘍は多種多彩な表現形を示すことが知られており,日常の臨床現場において,良性悪性の鑑別,良性の場合では大きさや性状から腹腔鏡下手術,薬物療法等の適応となるかといった,適切な判断が求められる.このため臨床の現場では超音波検査の他に,腫瘍マーカーの測定,MRI等の画像検査を行う事が一般的である.その中で超音波検査は,その場で診断が可能である事,非侵襲的な検査である事から,最初に行われる画像検査といえる.そして超音波検査に求められる要素は,病変の有無の確認,良性悪性の鑑別を含め組織型の予測といった,スクリーニング検査としての精度が求められる.以前より我が国では卵巣腫瘤をエコーパターンから分類する試みがなされ,2000年に日本超音波医学会用語診断基準委員会から公示された.これはエコーパターンから6つに分類し,それぞれに悪性腫瘍の確率が表記されている(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型では3%以下であり,Ⅳ型は約50%,Ⅴ型は約70%,Ⅵ型は約30%).この分類に関しては経腹超音波の所見を基に考えられていることから,現在普及している経腟超音波を用いた場合や,カラードプラーの所見,CA125等の腫瘍マーカー値を含めた診断精度の向上が検討されてきた.海外においてはrisk of malignancy index(以下RMI)と呼ばれる,卵巣腫瘍の形態的特徴をスコア化したもの,閉経の有無,CA125の値から悪性腫瘍の可能性を計算する方法が扱われてきた.また9つの施設よりなるInternational Ovarian Tumor Analysis(以下IOTA)では統一された超音波所見,用語,を用いて大規模な研究を行っており,悪性腫瘍の診断精度の向上を図っている.この様に海外では形態的に特徴のある所見の有無をスコア化し,さらに形態以外の所見を加味することにより,悪性腫瘍のスクリーニングを行う傾向にある.そこで,日超医の分類とRMIを比較するために,当院で2011年1月から12月までの1年間で手術を施行した卵巣腫瘍198例について,後方視的に超音波所見と術後の病理組織所見の比較を行った.内訳は悪性腫瘍が32例,境界悪性腫瘍が5例,子宮内膜症性嚢胞が59例,皮様嚢腫が54例,その他良性腫瘍が45例だった.超音波所見,CA125値は手術前60日以内のものを使用した.日超医の分類による悪性腫瘍の確率はそれぞれⅠ型3.7%,Ⅱ型0%,Ⅲ型8.9%,Ⅳ型61.1%,Ⅴ型46.7%,Ⅵ型50%であった.さらにⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型を良性腫瘍の指標,Ⅳ型,Ⅴ型,Ⅵ型を悪性腫瘍の指標と考えた場合,境界悪性例を含めた37例における感度は83.7%,特異度は85.1%,陽性的中率は56.3%,陰性的中率は95.8%であった.一方,RMIを用いるとcut off値をJacobsらの文献に従い,RMI値200とした場合,感度は35.1%,特異度は91.9%,陽性的中率は50.0%,陰性的中率は86.0%であった.この成績はJacobsらの報告による感度85%,特異度97%よりも感度,特異度ともに下回る結果となったが,CA125の正常上限値である35IU/mlより低値を示した例が17例(45.9%)認めたこと,21例(56.7%)でまだ閉経前であったことからRMI値が低い傾向となった事,良性腫瘍の中に子宮腺筋症を合併しCA125が高値を示した例あったことが要因として考えられた.最近のIOTAの見解でも地域により卵巣腫瘍の発生頻度が異なること,医療体制の違いがあることから地域ごとの適正化が必要としており,我が国における卵巣腫瘍の状況に見合った超音波診断基準が求められると思われた.