Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム7 <診療に活かす> 産婦人科領域超音波診断の再評価

(S316)

子宮異常と3D診断の再評価

Reevaluation of usefulness of the 3D ultrasonography for uterine abnormality

井上 統夫, 増崎 英明

Tsuneo INOUE, Hideaki MASUZAKI

長崎大学医学部産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University School of Medicine

キーワード :

【目的】
3D超音波(3D-US)が実用化されて久しいが,婦人科領域ではその能力が十分に活用されているとは言いがたい.ひとつには機器が高価なこと,さらには特に婦人科領域において,現状の2D超音波(2D-US)と比較して機器導入コストに見合う有用性があまり示されていないことが原因かもしれない.しかし最近では超音波機器の更新の際に新たに3D機材を購入する施設も増加してきているようである.そこで今回私どもは,婦人科疾患とくに子宮内腔に異常を認める疾患に対する経腟3D-USの有用性について検討した.
【対象および方法】
2010年から2012年に当科を受診した,1.子宮内腔腫瘤性病変(粘膜下子宮筋腫,子宮内膜ポリープ),2.子宮奇形,3.その他(子宮内避妊具遺残,子宮内妊娠部位の異常例)の疾患について,通常の診察の後に経腟3D-USを施行し,その診断および治療に対する有用性を検討した.1.子宮内腔腫瘤性病変(粘膜下子宮筋腫,子宮内膜ポリープ):子宮内膜ポリープおよび粘膜下子宮筋腫の術前診断で子宮鏡下手術(TCR)または子宮摘出を行った22例(子宮内膜ポリープ10例,粘膜下子宮筋腫12例)を対象とし,後方視的に3D-US画像を術前MRI所見および術中または摘材所見と比較した.2.子宮奇形: 3D-USが子宮奇形の診断に有用か否か,また不育症検査において子宮卵管造影(HSG)の代替検査となり得るかを明らかにすることを目的とした.不育症または不妊症検査のため3D-USおよびHSGを行った50例を対象とし,両検査法で子宮奇形の診断を行い,判断が困難である場合にはMRIを撮影し最終的に判断した.3.その他(子宮内避妊具遺残,子宮内妊娠部位の異常例): 少数例であるが子宮内避妊具の遺残の診断,および卵管角部妊娠と子宮内妊娠との鑑別診断の目的で経腟3D-USを使用した.
【結果】
1.3D-USで得られた所見は術前MRI所見および手術所見とほぼ一致しており,子宮内腔腫瘤性病変の術前病態を簡便に把握するのに有用であると考えられた.また子宮内膜ポリープの診断に関しては,3Dソノヒステログラフィーを用いた場合にはMRIよりも有用であった.2.3D-USは正常子宮および中隔子宮の診断において感度および特異度が高く,診断精度はHSGと遜色なく,不育症,不妊症における子宮奇形の初期スクリーニング検査として有用であった.3.子宮内避妊具遺残では超音波のみで遺残した避妊具の形を確認することができた.また子宮卵管角部妊娠と子宮内妊娠との鑑別においては,MRIを撮影せずに3D-USのみで鑑別が可能であり,不要な手術を回避することができた.
【結論】
経腟3D-USは患者にとって低侵襲,低コストで,必要に応じて診察のたびに何度でも施行できる簡便さが,MRIやCT,造影X線検査に勝るメリットである.今回の検討で,3D-USは子宮内膜ポリープの診断において,ソノヒステログラフィーを行うといった工夫によってMRIより高い診断精度が得られ,術前の病態把握に有用であると考えられた.また粘膜下子宮筋腫においても子宮鏡検査より低侵襲で簡便に筋腫発生部位の把握が可能であった.また子宮奇形の診断に対しては,HSGの代替検査になり得るものと思われ,その他にもいくつかの子宮内腔病変の診断にも有用である可能性が示唆された.今後さらに多くの疾患に経腟3D-US適用し,その有用性を検討していきたい.