Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム2 <教育に活かす> 産婦人科救急における知っておいて欲しい超音波所見

(S310)

臍帯異常の超音波所見

Ultrasound findings in umbilical cord abnormalities

長谷川 潤一, 仲村 将光, 濱田 尚子, 松岡 隆, 市塚 清健, 大槻 克文, 岡井 崇

Junichi HASEGAWA, Masamitsu NAKAMURA, Shoko HAMADA, Ryu MATSUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Katsufumi OTSUKI, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科

Department of obstetrics and gynecology, Showa university school of medicine

キーワード :

臍帯は胎児の唯一の命綱であり,その問題は重篤な胎児予後と深く関連する.しかし,妊娠中の臍帯異常の診断や分娩時の適切な管理が広く普及しているとは言えない.臍帯血管を守るための生理的なメカニズムは,元来,多数備わっている.外力からの緩衝のため臍帯は羊水中に存在し,弾力性に富むワルトン膠質が血管を保護する.可動性を損なわず,また牽引や圧迫,捻転などの外力から臍帯血流への影響を緩和するために捻転構造がある.2本の臍帯動脈は,胎児から胎盤への循環を安定させる.これらの防御機構が壊れた場合,児に問題を起こす可能性が高くなる.勿論,全ての異常を診断することは困難であるし,診断されたとしても妊娠中に対処できない場合も少なくない.しかし,それらを事前に確認し,講じられる手は打つというモチベーションが不可欠である.臍帯異常による問題は,分娩が終了するまでは決して安心することができない.これらの異常に対して我々が戦える現実的な手段は,超音波検査と胎児心拍数図だけである.当教室では,これらの機器を駆使し,臍帯異常を系統立てたスクリーニングによって妊娠中に診断し,ハイリスク症例に対し最適な妊娠・分娩管理を目指し研究を行っている.胎児死亡及び胎児機能不全の原因調査より,重要な臍帯異常と考えられるものを下に列挙した.これらの症例では,分娩前からの厳重な胎児心拍数モニタリングが必要である.軽い子宮収縮でも一過性徐脈が出現する場合は,その臍帯異常の影響が大きく,警戒徴候と考える.本発表では,各々の異常について実例を示しながら,超音波所見の取り方や管理方法について論じる.
【卵膜付着】
単胎の1-2%に認められ,ワルトン膠質に守られない脆弱な卵膜血管が存在し,子宮収縮や胎動に伴って臍帯血管の圧迫が急激に生じる.破水時はそれが断裂することもある.前置血管は,卵膜血管が内子宮口近くにある状態で,極めてハイリスクある.超音波診断は,臍帯付着部位の確認で行う.胎盤実質上に臍帯付着部が描出出来ないときに卵膜付着を疑い,臍帯が子宮壁に付着する場所を描写するか,卵膜上を子宮壁に沿って走行する血管を描出することで診断する.
【臍帯過捻転】
過捻転は,臍帯の牽引,圧迫,捻じれに弱く,臍帯の血流障害が起きやすい状態である.ひとたび変動一過性徐脈が出現するような状態になれば,急速に児の状態が悪化する可能性がある.超音波では,臍帯一周期の長さを測って捻転の程度を評価する.
【臍帯巻絡】
全分娩の20-25%に認められる頻度の多い異常である.1回巻絡では0回の児と予後は変わらない.初産で2回以上,経産で3回以上の巻絡で有意に急速遂娩の頻度が高い.妊婦にとって巻絡は,妊娠中の不安材料となることがあるため,正しい診断と適切な説明が重要である.
【単一臍帯動脈】
単一臍帯動脈の発生機序は二つあり,元来無形成であるものと,二次的な閉塞によって一方の動脈が退縮したもの(閉塞型)である.閉塞型は,突然発生する胎児機能不全と関連する.型の超音波診断は,妊娠中の複数回の超音波検査により可能で,少なくとも前の検査で2本確認されていた動脈が1本になれば,閉塞性と診断する.
【臍帯下垂・脱出】
臍帯脱出では,最も速やかな緊急帝王切開が要求される.可能な施設では超緊急帝王切開の適応となる.臍帯下垂が存在する場合,軽い子宮収縮でも胎児先進部からの圧迫を受けやすく,早めの帝王切開を考慮すべきである.経腟超音波によって臍帯が胎児の先進部よりも内子宮口側に存在する所見で診断し得る.胎位異常,メトロイリンテルの使用,羊水過多,胎胞脱出症例で起きやすい.