Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
コントラバーシ3 <診療に活かす> 腹部超音波検診の課題;カテゴリー分類は必要か?

(S301)

腹部超音波検診の課題:カテゴリー分類は必要か?肝臓のカテゴリー分類

The category classification of the liver tumo

小川 眞広

Masahiro OGAWA

駿河台日本大学病院内科

Internal medicine, Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査の弱点はなんといっても客観性の欠如である.これは,撮影法の基準化が徹底されていない事にも一因があるが,施設や検者により撮影条件(拡大率や走査断面,周波数やTissue harmonic imagingの有無など)が一定でない事が最大の理由と考えている.このような背景の中,2011年に消化器がん検診学会より腹部超音波がん検診基準が発表されその中の判定基準にカテゴリー分類が記載されている.昨年各方面で「カテゴリー分類とは?」「カテゴー分類の方法は?」「カテゴリー分類の導入は可能か?」などいろいろな場面で議論されてきた.今回は,さらに原点に戻り「カテゴリー分類は必要か?」という問題を肝臓において考える.
【カテゴリー分類とは】
カテゴリーは,超音波検査で認められる所見の集約であり,検査担当者(医師・技師)が表記する.肝,胆道,膵,腎,脾の5対象臓器については,各臓器において認められた所見のうち,最高位のカテゴリーをその臓器のカテゴリーとして記載する.臓器が全く描出できない場合にはカテゴリー0(判定不能)とするが,臓器の一部が描出できない場合には描出不能部位を記載する.としている.0から5のカテゴリーの意味は,0:判定不能装置の不良,被検者,検者の要因などにより判断できない.1:異常なし.正常のバリエーションを含む.2:良性明らかな良性病変を認める.3:良悪性の判定困難良悪性の判定困難な病変あるいは悪性病変の存在を疑う間接所見を認める.高危険群を含む.4:悪性疑い悪性の可能性の高い病変を認める.5:悪性明らかな悪性病変を認める.である.カテゴリーを付けるための肝臓における判定基準が記載されておりこれにしたがいカテゴリー分類を付ける.
【肝臓における問題点】
脂肪肝以外の慢性肝障害がカテゴリー:3となるところである.つまり肝細胞癌のいわゆるhigh risk groupに相当する症例が腫瘍性病変の有無に関わらずカテゴリー-:3となってしまうことである.これには注意が必要でカテゴリー分類は,超音波所見の基準化であり事後管理の項目は含まないということである.つまり肝腫瘤病変の指摘が無いカテゴリー3であっても総合判定を行う医師がインターフェロン療法の適応と判定した症例や,超危険群のためMRIの併用検査が望まれる症例などは事後管理が要治療や要精査となる.カテゴリー2の脂肪肝でも他の所見よりNASHが疑われる場合は事後管理が要精査となる.さらに最高位のカテゴリーを付けた所見の記載が無く経過観察や事後管理において不便となり記載の必要はあると考えられた.
【カテゴリー分類の確認】
カテゴリー分類は,超音波診断を行うための手法でも無く,事後管理のための手法で無く,あくまでも超音波所見の基準化である事の認識が必要となる.超音波検査はリアルタイムに診断を行うが特に検診の場では,すべて専門医が施行するわけでは無いので若い技師・医師が施行した際にもある程度共通した検査結果が得られるためのものである.したがってカテゴリー分類の導入によりこれまで施行できなかった超音波所見の統一した集計ができる可能性がある.さらにカテゴリーを付けるために検査施行時に最低限のチェックポイントは共有できることになり超音波検診の底上げにもなることが考えられる.
【結語】
カテゴリー分類は,今後の改良により超音波検査弱点である客観性の向上に役立つと考えるため必要であると思われる.