Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
コントラバーシ3 <診療に活かす> 腹部超音波検診の課題;カテゴリー分類は必要か?

(S300)

腹部超音波がん検診基準のカテゴリー判定について:目的と展望

Categorized Criteria for Abdominal Ultrasound Cancer Screening:Purpose and the future prospects

田中 幸子

Sachiko TANAKA

大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター

Director, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention

キーワード :

2011年9月に日本消化器がん検診学会から発行された「腹部超音波がん検診基準」の作成に関わった立場から,カテゴリー判定採用の目的および今後の展望について述べる.カテゴリー判定採用の目的は超音波検査の精度管理と精度評価を全国共通の基準に基づいて行えるようにすることである.将来的には腹部超音波スクリーニング検査のがん検診としての有効性を評価することを目標としている.今回作成されたカテゴリー判定基準は,数人の超音波専門医をメンバーとするワーキンググループにおいて経験に基づいて案を作成し,公示期間後に微修正され発行されたものであり,エビデンスレベルの高い学術論文に拠ったものではない.まず基準を作成し,それを実際に運用した結果に従って修正を加え,より妥当性の高いものを作り上げるという考えで作成された.発行されて以降,日本消化器がん検診学会の全国集会,地方会ならびに各支部の超音波研究会や本学会も含む関連学会で特別企画などに取り上げられ多数の試用経験が発表されてきた.概ね妥当であるという評価が多いが,カテゴリー3が多くなりすぎるとの意見や具体的な修正意見も提案されている.現在これらの意見を考慮して微修正の作業を進めている.一方,この基準には良悪性の鑑別点が明確に示されているので初心者に対する教育的意義があるという副次効果も指摘されている.次に,本学会の用語・診断基準委員会において制定されている肝腫瘤,胆嚢癌,膵癌などの各種診断基準との違いについて整理すると以下のようになる.すなわち,本学会の診断基準は,診断の確定した病変についてその典型的な超音波所見を示したものであるといえる.しかし,実際の検査の際に発見される病的と考えられる超音波像は,診断基準に示された特徴的所見を兼ね備えたいわゆる典型像を呈することはむしろ稀であり,いくつかの可能性の高い診断名のいずれかに該当するとしか言えないことが殆どである.しかしながら,健診の現場では受診者への説明と事後指導の指示が求められるので,何らかの評価を行う必要がある.この評価のための基準が今回のカテゴリー判定基準である.従って,本学会の診断基準とカテゴリー判定とは本来,目的・用途の異なるものであり,併存することに何ら問題はないと考える.但し,基準間に矛盾がないようにする必要があると考えている.カテゴリー判定は前述のように試用経験の報告はなされてきたが,実際にシステムとして導入している健診施設は少ない.採用にはコンピュータシステム改変などの費用や検査担当者の再教育も必要となるのでインセンティブがないと普及は難しいかと考えられる.一方,日本人間ドック学会においては画像検査などのガイドラインの見直し中であるが,腹部超音波検査は当カテゴリー判定に基づいた判定および事後指導区分を採用することとなっている.担当委員は一部重複しており,両学会共通の判定基準及び事後指導区分作成の方向で作業中である.人間ドック学会のタイムスケデュールでは,2013年8月までに最終案を提出,2013年末には公示,2014年4月より全国の人間ドック学会認定施設で一斉に運用される予定である.日本消化器がん検診学会でも2014年度より認定施設に対する全国集計に超音波がん検診基準に関する集計表が追加される予定で準備中である.従って,2014年度以降には全国的にかなり多くの健診施設でカテゴリー判定に基づいた結果説明や事後指導が行われることになることが予測される.本学会においても,妥当性をご検討のうえ,3学会共通の判定基準として採用して頂けるよう希望する.