Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
コントラバーシ3 <診療に活かす> 腹部超音波検診の課題;カテゴリー分類は必要か?

(S300)

カテゴリー分類は有用か?(技師と判定医のカテゴリー乖離)

Is the categorized criteria for ultrasound cancer screening useful? -discrepancy between Sonographers and Diagnosticians-

岡庭 信司1, 岩下 和広2, 熊谷 金彦2, 宮下 昌徳2, 小林 真里恵2

Shinji OKANIWA1, Kazuhiro IWASHITA2, Kanehiko KUMAGAI2, Masanori MIYASHITA2, Marie KOBAYASHI2

1飯田市立病院消化器内科, 2飯田市立病院超音波室

1Department of Gastroenterology, Iida Municipal Hospital, 2Division of Ultrasound, Iida Municipal Hospital

キーワード :

当院では2011年8月より人間ドックの超音波判定にカテゴリー分類を用いており,カテゴリー分類の概要と技師と判定医の乖離例につき検討したので報告する.
【対象】
2011年8月〜2012年7月に人間ドックの超音波を受診した1883名を対象とした.技師12名(認定超音波検査士4名)/判定医1名(超音波指導医)
【検討項目】
1.ドック受診者におけるカテゴリー分布と要精検率,2.カテゴリー乖離例の頻度と所見
【結果】
・カテゴリー分類(C)の概要臓器別のカテゴリー分布は,肝臓C0 0.15%,C1 39.6%,C2 54.4%,C3 2.71%,C4 1.23%,C5 0%胆嚢C0 2.28%,C1 71.2%,C2 23.9%,C3 1.91%,C4 0.53%,C5 0%胆管C0 3.19%,C1 94.0%,C2 0.42%,C3 2.12%,C4 0%,C5 0%膵臓C0 1.54%,C1 95.1%,C2 0.80%,C3 1.65%,C4 0.21%,C5 0%腎臓C0 0.16%,C1 60.2%,C2 36.9%,C3 1.86%,C4 0.37%,C5 0%脾臓C0 0.27%,C1 96.4%,C2 0.74%,C3 2.39%,C4 0%,C5 0%であった.要精検率は,C3-5を要精検対象と仮定すると肝臓3.94%,胆嚢2.44%,胆管2.12%,膵臓1.86%,腎臓2.23%,脾臓2.39%(1.86〜3.94%),C4,5とするとそれぞれ1.23%,0.53%,0%,0.21%,0.37%,0%(0〜1.23%)であった.・乖離例の検討15.2%に何らかの乖離を認め,臓器別の頻度は肝臓5.1%(96例),脾臓4.2%(79例),胆道3.2%(60例),腎臓2.0%(37例),膵臓1.1%(21例)であった.乖離所見をみると,肝臓では限局性の低エコー領域(16例),肝腎コントラストの見落とし(12例),高エコー腫瘤(6例)が多く,技師が充実性病変(C3)とした低エコー領域を判定医が脂肪肝の限局性低脂肪域(C2)に,技師が血管腫の特徴所見を伴わない高エコー腫瘤を経験的に血管腫疑い(C2)としたものを判定医が充実性腫瘤(C3,4)にしていた.脾臓では,脾門部充実性病変(C3)としたものを判定医が副脾(C1)にしていた(69例).胆道では胆嚢ポリープの点状高エコー(9例)や限局性壁肥厚(8例)の見落しと,判定医が桑実状としてC2としたもの(7例)が多かった.腎臓では形態異常や輪郭の凹凸・変形を判定医が正常変異(C1)としたもの(7例)や充実性病変の輝度をCECより低エコーとした誤判定 (7例)が多かった.膵臓では嚢胞径 (3例)や主膵管径(3例)の過小評価例が多かった.乖離例には肝臓の低エコー領域や副脾のようにC3,4がC1,2となるもの(54.3%)と,膵嚢胞性腫瘤や膵管拡張のようにC1,2がC3,4になるもの(16.0%)が含まれており,前者はカテゴリー分類の特異度に後者は感度に影響すると考えられた.さらに,乖離例の頻度を2011年8月〜2012年1月(導入期)と2012年2月〜2012年7月に分けると,16.7%(導入期)から14.4%に乖離例の頻度が減少しており,超音波所見の習熟が乖離例の減少に繋がったと思われた.
【考察】
・要精検率は,精検対象をC3-5と仮定すると1.86〜3.94%,C4,5とすると0〜1.23%となり,C3所見の更なる絞込みと適切な事後管理の設定が必要と考えられる.・技師と判定医のカテゴリー乖離を15.2%に認めており,カテゴリー分類の普及には超音波所見の詳細な解説と技師教育が必要と思われる.