Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション27 <診療に活かす> 膵腫瘍の診断に最も有用な画像診断法は?:画像診断の現状とピットフォール

(S293)

膵癌のEUS診断

Endoscopic ultrasonography in the diagnosis of pancreatic cancer

小林 剛

Go KOBAYASHI

仙台市医療センター仙台オープン病院消化器内科

Gastroenterology, Sendai City Medical Center

キーワード :

超音波内視鏡(EUS)は,手術適応となるような小膵癌の存在診断に重要な役割を果たし,鑑別診断では造影剤を用いた新たな血流評価も試みられている.
【小膵癌の描出能】
各種画像による膵癌の腫瘍自体の描出能を,再構築した組織学的な腫瘍径(pTS)別に比較すると,pTS2以上の膵癌ではUS 89%,EUS 94%,CT 96%,MRI 94%とすべての画像診断で腫瘤の描出が可能であったのに対し,pTS1ではUS 61%,EUS 94%,CT 41%,MDCT 67%,MRI 33%であり,EUS以外の画像診断では低率であった.
【膵癌と腫瘤形成性膵炎との鑑別】
1)腫瘤像:腫瘤形成性膵炎で有意に高い頻度でみられた内部構造は「strong echo/comet sign」,「無エコー域:echo free spaceの散在」,「高エコー巣:hyperechoic foci」(p<0.01)および「内部不均一:heterogeneity」(p<0.05)の因子であった.「strong echo/comet sign」は腫瘤形成性膵炎では90%と高い頻度でみられたが,膵癌でも22%にみられた.腫瘤形成性膵炎における「penetrating duct sign」の出現率は報告によって,10-70%とばらつきがみられるが,著者らの検討では17%にみられ,ERCP所見に呼応していた.2)膵管像:膵癌では腫瘤の尾側膵管の拡張が76%にみられるのに対し,腫瘤形成性膵炎では拡張を伴わない例が56%存在した.このようなEUS像の背景としてERCP所見をみると,主膵管の限局性狭窄や閉塞を示さない例と,膵管狭細型を呈する例を合わせて約1/3を占めたこと,また,狭窄例に関しては尾側膵管の拡張径が膵癌例より細い傾向を示していたことなどが挙げられた.3)胆管像:胆管壁構造を,ドレナージ前の層構造の出現率について比較すると,膵頭部癌では胆管壁は一層の高エコ−として描出されることが多い(71%)のに対し,腫瘤形成性膵炎では層構造を有する胆管壁肥厚が62%みられた.腫瘤形成性膵炎では胆管狭窄,黄疸の発症率が共に膵癌に比較して低いが,胆管壁は層構造を呈し易い結果であった.腫瘤形成性膵炎では膵癌にみられる進行性の胆管狭窄とは異なり,膵から胆管側への炎症の波及や可逆性狭窄に伴う胆管自体の炎症,浮腫などがこのような超音波像を惹起しているものと推測される.
【血流からみた膵癌と限局性AIPの鑑別】
EUSを用いて,背景の画質を低下させないためにtissue harmonicのままで,eFLOWとSonazoidとを組み合わせて使用するcontrast-enhanced color-Doppler EUS (CC-EUS) によって自己免疫性膵炎(AIP)の血管構築の評価を行った.対象はAIP14名であり,膵癌14名を対照として,perfusion imagesとeFLOWによる血管構築像を比較した.はじめに,perfusion imagingで評価すると,homogenous patternを示したのがAIPでは79%であり,膵癌では43%と低かったが両群間で差はなかった(p=0.05).すなわち,これまでは膵癌の腫瘤部は造影剤がperfusionし難いことからhypovascularと判定される報告が多かったが,SonazoidとEUSによるtissue harmonicでの判定では,膵癌でも半数近くにhomogenous patternがみられた.さらにheterogenous patternを呈した例を分析すると,まだらにlow echoic areasを呈する例はAIPでは7%であるのに対し,膵癌では43%と多い結果であった(p=0.04).次にSonazoidがperfusionしてからeFLOWを用いて血管構築像を評価すると,AIPの86%にfine network vascular patternがみられたのに対し,膵癌では全例にこのような所見はみられず,5本以下のfew feeder vesselsが確認されるのみであった.以上の結果からSonazoidを用いたeFLOW color modeによるEUSは,腫瘤の血管構築の描出に優れ,AIPと膵癌の鑑別診断に有用と考えられる.