Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S289)

粘膜下腫瘍診断における体外式造影超音波検査の有用性の検討

The efficacy of contrast-enhanced ultrasonography in diagnosing submucosal tumor

西田 睦1, 2, 間部 克裕3, 加藤 元嗣3, 下國 達志4, 高橋 典彦4, 七戸 俊明5, 平野 聡5, 渋谷 斉1, 清水 力1

Mutsumi NISHIDA1, 2, Katsuhiro MABE3, Mototsugu KATOU3, Tatsushi SHIMOKUNI4, Norihiko TAKAHASHI4, Toshiaki SHICHINOHE5, Satoshi HIRANO5, Hitoshi SHIBUYA1, Chikara SHIMIZU1

1北海道大学病院検査・輸血部, 2北海道大学病院超音波センター, 3北海道大学病院光学医療診療部, 4北海道大学病院消化器外科Ⅰ, 5北海道大学病院消化器外科Ⅱ

1Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 2Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 3Division of Endoscopy, Hokkaido University Hospital, 4Department of General Surgery, Hokkaido University Hospital, 5Department of General Surgery II, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【はじめに】
消化管粘膜下腫瘍(SMT)は粘膜に病変を認めないため,内視鏡では正確な診断が困難な場合が多い.今回我々は,SMTに対する造影超音波検査(CE-US)の有用性を検討したので報告する.
【対象】
2006年7月-2013年1月に体外式超音波検査(US)およびCE-USを施行し,SMTが疑われ組織学的に確定診断に至った55例62病変(男性27例,女性28例,平均年齢62.1歳).最終診断内訳はSMT58病変(GIST 21,リンパ腫21,カルチノイド3,神経鞘腫3,脂肪腫2,その他8病変),胃壁外性圧排2病変,慢性胃炎2病変.病変サイズ:6.2〜270mm (中央値38.8mm).
【使用装置・造影剤】
東芝Aplio XV/XG/ 500.使用プローブ:中心周波数帯3.75MHz, 6MHz, 7MHz.造影剤:Sonazoid (0.015〜0.0075ml/kg).
【方法】
上部消化管の病変には必要に応じて200ml程度の飲水をさせ検査施行.1)base line USにて病変部位,腫瘍の主座の確認により存在診断を,内部性状などによる質的診断を行った.2)CE-USでは血管相での造影効果(微細均一/強く不均一),実質相での造影不領域の有無,Micro Flow Imagingでの血管構築 (点状/線状/屈曲蛇行)を分類し,診断に加味した.
【検討項目】
CEUS未施行(NCE)群と施行(CE)群における①SMT存在診断率,②GIST診断率,③GIST転移リスク分類(Miettinen M, et al. Semin Diagn Pathol. 2006)との相関.統計学的解析はχ二乗検定,Spearmanの順位相関解析を使用.
【結果】
①真にSMTであった58病変の存在診断はNCE群 87.2%(34/39病変),CE群 94.7%(18/19病変)と有意差はなかった.②再検にて病変をとらえCE-US施行した3例を含む59病変におけるGIST診断の感度,特異度,正診率,陽性的中率,陰性的中率はそれぞれ,NCE群(38病変)100.0%, 90.3%, 92.1%, 70.0%, 100.0%, CE群(22病変) 93.3%, 85.7%, 90.9%, 93.3%, 85.7%とすべてに有意差はなかった.③GIST転移リスク分類が可能であったのはNCE群 2病変,CE群 11病変であった.統計学的解析が可能なCE群にて造影効果(r=0.661, P=0.027),血管構築(r=0.748, P=0.008)と有意に相関し,造影不領域の有無とは相関しなかった(r=0.412, P=0.208).
【考察】
①存在診断率はCE-US施行の有無で有意差はなく,造影剤使用の上乗せ効果は認められなかった.両群で指摘出来なかった6病変中3病変は虫垂カルチノイド,治療中の回腸MALTリンパ腫,進行胃癌に接して存在したGISTと,1cm前後の小病変であった.残り3病変は再検にて全例捉えることが可能であった.また,造影にて流入血管を同定することで由来臓器の確定診断に至った壁外性発育のGISTが3例存在した.②GIST診断についても2群間で有意差はなかった.このことは装置性能の向上,高周波プローブの使用などにより非造影USにても病変の主座の同定(GISTにては固有筋層との連続性),内部性状の正確な評価が可能となったことに起因すると考えられた.GISTとの鑑別を要したリンパ腫や脂肪腫などに対して,CE-USの造影効果,血管構築が質的診断に有用であった症例が存在し,CE-USは非造影USにおける診断根拠を確診づけるものと考えられた.③今回の検討では,NCE群におけるGIST転移リスク分類の検討は行えなかったが,CEUS群においては腫瘍の造影効果,血管構築との有意な相関を認め,転移リスク分類におけるCEUSの有用性が示唆されたものと考える.
【結語】
SMT存在診断,GIST診断にCE-US施行の有無で有意差はなかったもの,GISTの転移リスク分類にはCE-USが有用である可能性が示唆された.