Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S289)

消化管虚血ならびに出血の造影超音波診断

Bowel ischemia and active gastrointestinal bleeding: evaluation with contrast-enhanced ultrasonography

眞部 紀明1, 畠 二郎1, 河合 良介1, 今村 祐志1, 春間 賢2

Noriaki MANABE1, Jiro HATA1, Ryosuke KAWAI1, Hiroshi IMAMURA1, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学消化管内科学

1Division of Endoscopy and Ultrasonography, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【緒言】
消化管疾患において微細循環を評価することは,その病態把握に重要であるが,これまで非侵襲的かつ簡便に評価する方法は存在しなかった.近年,体外式超音波検査(US)の各種消化管疾患に対する臨床応用に関心が集まりつつあり,多くの施設からその有用性が報告されている.更に,近年における超音波造影剤の開発により,消化管の微細循環評価が可能となり,造影USの各種消化管疾患への臨床応用が期待されている.本パネルディスカッションでは,我々が臨床応用している消化管造影USのうち,消化管虚血の判定および消化管出血の判定に関して,これまでの検討結果をもとに症例を呈示しながら解説する.なお,消化管に対する超音波造影剤の使用は保険適応外であり,院内の倫理委員会の承認および患者からのinformed consentを得て検査を施行している.
【消化管虚血の判定における造影USの有用性】
造影USにより,消化管壁内の微細血流がリアルタイムに評価できることから,絞扼性腸閉塞などにおける消化管虚血の判定に臨床応用可能と考えられる.我々の施設における造影USを用いた消化管虚血の検出能は,感度100%,特異度98%と良好な成績を得ている.特に,腸管虚血が疑われる患者の場合,全身状態が悪い事も多く,造影USはベットサイドで行える点でも臨床的意義が大きい.また,腸管虚血が疑われる患者の中には腎障害あるいはアレルギー等で造影CTが使用できない患者も存在するため,造影USの果たす役割は大きいと考えられる.
【消化管出血の判定における造影USの有用性】
超音波造影剤の消化管の管腔内への漏出を描出する事で,消化管出血の検出の判定に臨床応用可能と考えられる.我々のこれまでの検討から,消化管の活動性出血の検出率は,感度73.7%,特異度97.1%と良好な成績を得ている.特に,小腸や大腸疾患からの出血の場合は,そのアプローチの煩雑さや前処置の必要性から内視鏡検査が躊躇される場合も少なくなく,また事前に出血部位を造影USで確認しておく事はその後の内視鏡の挿入ルートの選択にも役立ち,臨床的意義が大きいと考えられる.
【問題点】
1. 粘膜下層の高エコー帯において組織からの信号と超音波造影剤からの信号を分離する事が困難な場合があり,特に静止画像での判定には注意を要する.2. 使用する周波数が高周波の事が多く,超音波造影剤のバブルが共振しにくいため,MI値やゲインの設定に注意を要する.3. 流速に関する客観的な指標がないため,血流の鬱滞などの判定は術者の大まかな印象で判断せざるを得ず,特に初期の絞扼性腸閉塞の判定に注意を要する.
【結語】
現時点では幾つかの改善すべき点が存在するものの,消化管虚血の判定および消化管出血の判定における消化管造影USは診療に有用であると考えられる.今後,多施設からの知見の蓄積により,その臨床的意義や評価の再現性を,更に明らかにしていく必要があると考えられる.