Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S288)

膵嚢胞性腫瘍術前診断における造影超音波内視鏡検査の有用性の検討

Usefulness of contrast-enhanced endoscopic ultrasonography (CE-EUS) for preoperative diagnosis of pancreatic cystic neoplasms

大野 栄三郎1, 廣岡 芳樹1, 伊藤 彰浩2, 川嶋 啓揮2, 伊藤 裕也2, 平松 武2, 中村 正直2, 後藤 秀実1, 2

Eizaburo OHNO1, Yoshiki HIROOKA1, Akihiro ITOH2, Hiroki KAWASHIMA2, Yuya ITOH2, Takeshi HIRAMATSU2, Masanao NAKAMURA2, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部, 2名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学

1Department of endoscopy, Nagoya University Hospital, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
IPMN診療を中心とする膵嚢胞性腫瘍の術前診断における造影超音波内視鏡検査(CE-EUS)の有用性とその意義について検討した.
【対象】
2001年1月以降膵疾患に対してCE-EUSを施行した1079例中,IPMNと診断し術前にCE-EUS及び造影CTを施行した154切除例を対象とした.手術適応は,1.主膵管型(MD),2.CE-EUSにて粘液塊を除外した壁在結節(MN)を認める混合型(mixed)と分枝型(BD),3.有症状例,4.通常型膵癌合併例(DC)とし,IPMCとIPMN由来浸潤癌(Inv.IPMN),DCを悪性例とした.術前画像所見による病型分類(MD,Mixed,BD)はCE-EUS及びIDUSにおける低乳頭状隆起or MNの局在にて診断した.MNはCE-EUSでは血流(+)の隆起性変化(EUS-MN)とし(Ann Surg2009),造影CTでは2mm幅で指摘しうる4mm以上の隆起(CT-MN)と定義した.主膵管進展は術前にIDUSを施行した120例につき対比した.
【方法】
超音波造影剤は2006年11月まではLevovistを使用し以後はSonazoidを使用した.Sonazoidは1バイアルを2mlで懸濁し0.015ml/kgをボーラス静注し使用した.Sonazoidの使用に関しては当施設のIRB認可の上,十分なインフォームドコンセントに基づき施行している.内視鏡は基本的に電子ラジアル型を用いPentax社製EG3670URK,Olympus社製GF-UE260-AL5,富士フィルム社製EG-530UR2を使用した.観測装置と造影設定は主として日立アロカメディカル社製HiVision900,Ascendus(WPI法,MI値0.16-0.23)又はProsound α-10(ExPDD法,MI値0.25)を使用した.
【検討項目】
1) CE-EUSのMN診断能の検討(①造影CTとの比較,②非造影EUSとの比較:粘液塊の鑑別能)2) 主膵管内進展診断におけるCE-EUSとIDUSの比較.
【結果】
最終的病型はMD:Mixed:BD=17:54:83であった.最終病理診断はIPMA:IPMC:Inv.IPMN:DC=71:51:23:9で53.8%が悪性例であった.1-①)全154例に病理学組織学的にMNを認め,CTでは75例(48.7%),CE-EUSは全例でMN(+)であった.また,悪性例83例中26例はCTで結節を指摘できず,CE-EUSのみでMNを診断しえた79例中26例(32.9%)が悪性例であったがInv.IPMNは認めなかった.1-②)造影前後における平均MN高は前:後=10.1±9.3:8.5±9.6(p<0.0001)と有意差を認めた.CE-EUSでは全154例中66例(42.9%)で結節に不染域を認め,それらは病理学的に粘液塊であった.3)最終病理診断からみた主膵管内進展の診断能(感度:特異度:正診率)はIDUSで82.1:96.2:88.3(%),CE-EUSで77.6:84.9:80.8(%)とほぼ同等であった.
【考案】
EUSに「造影」を付加する意義としては①血流情報により得られる粘液塊除外を含むtissue characterization②コントラスト分解能向上による,より詳細かつ正確な病変の進展度診断が挙げられる.
【結語】
IPMNをはじめとする膵腫瘍性病変の診断においてCE-EUSは有用な検査法である.