Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S287)

肝癌治療支援としての造影超音波の役割

Roll of contrast-enhanced ultrasound as a treatment support system for liver cancer

今井 康晴, 安藤 真弓, 佐野 隆友, 村嶋 英学, 宮田 祐樹, 平良 淳一, 杉本 勝俊, 森安 史典

Yasuharu IMAI, Mayumi ANDOH, Takatomo SANO, Eigaku MURASHIMA, Yuuki MIYATA, Jun-ichi TAIRA, Katsutoshi SUGIMOTO, Fuminori MORIYASU

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
肝癌に対する治療は手術,局所療法,肝動脈塞栓療法が主体であり,各々約3割ずつ選択されている.画像診断による肝癌治療支援としては,目的病変の検出(ターゲッティング),治療(切除断端,穿刺経路,栄養動脈)のシミュレーション,治療中のナビゲーションおよびモニタリング,治療効果判定がある.肝癌の存在診断,質的診断についてはdynamic CT/MRIで行われることが多く,特に存在診断についてはGd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI)が最も感度が良い.CT/MRIのDICOM dataを利用した画像解析システムの開発も進みつつあり,治療のシミュレーションだけでなく治療効果判定においては治療前後の病変付近の歪みを補正することも可能となっている.さらに,磁気位置検出ユニットとCT/MRIのDICOM dataを用いたFusion画像超音波システムが各社の超音波装置に搭載されたことによりCT/MRIで検出された超音波描出不良結節を認識することも可能となった.このような状況下での肝癌治療支援における造影超音波(CEUS)の役割について当科での症例から考察した.
【対象と方法】
2007年1月〜2012年12月に当科では肝腫瘤に対して延べ3165例,そのうち肝細胞癌に対して延べ1746例の造影超音波を施行した.今回,肝癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA),肝動脈化学塞栓療法(TACE)の術前あるいは術中・術後にCEUSを行った症例を対象とした.超音波装置は,東芝メディカルシステムズ社製AplioXGまたは500,旧・日立メディコ社製EUB-8500またはHI VISION 900,日立アロカメディカル社製HI VISION PreirusまたはAscendus,GEヘルスケア社製LOGIQ E9を用いた.CEUSは,Sonazoid 0.3〜1.0ml/bodyを静脈注射し,投与1分までを血管相,10分以降をKupffer相とした.通常は,M.I. 0.2前後で撮像したが,高エコー腫瘤や低音圧造影modeで描出不良の腫瘤に関しては適宜高音圧で撮像した.
【結果と考察】
(1)B modeで等エコーまたは境界不明瞭な描出不良肝癌病変はCEUS Kupffer相で境界が明瞭となり,RFA施行が可能となったり適正な治療範囲を設定したりすることができた.(2)Fusion画像超音波システムを用いてもB mode描出不良肝癌を検出可能であったが,RFAを行う際には病変の境界をCEUS Kupffer相でより明瞭に描出した方が確実に穿刺できると考えられた.(3)局所再発病変は治療瘢痕と再発部位との区別がB modeやCEUS Kupffer相では困難なことが多いが,CEUS血管相では再発部位を濃染像としてリアルタイムに描出しながらRFA needleの穿刺が可能であった.(4)低音圧造影modeでのRFA治療評価は,腫瘍の境界が不明瞭となるためsafety marginの評価が困難なことが多く,造影modeの工夫が必要と考えられた.(5)RFA またはTACE後の腫瘍内残存病変の評価にはCEUSが優れ,そのまま超音波ガイド下RFAのシミュレーションも可能であった.(6)特に,TACE後の治療評価では,Lipiodol集積のためdynamic CTでは評価が困難な場合においても残存病変を明瞭に描出することが可能であった.
【結語】
CEUSはRFAの適応拡大,安全性・確実性の向上に貢献し,TACE治療評価においても有用であった.