Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S287)

胆膵疾患における造影超音波検査の有用性

Usefulness of contrast enhanced ultrasonography for pancreatobiliary diseases

橋本 千樹1, 川部 直人1, 原田 雅生1, 中野 卓二1, 嶋﨑 宏明1, 西川 徹2, 杉山 博子2, 新田 佳史1, 村尾 道人1, 吉岡 健太郎1

Senju HASHIMOTO1, Naoto KAWABE1, Masao HARATA1, Takuji NAKANO1, Hiroaki SHIMAZAKI1, Tooru NISHIKAWA2, Hiroko SUGIYAMA2, Yoshifumi NITTA1, Michihito MURAO1, Kentarou YOSHIOKA1

1藤田保健衛生大学肝胆膵内科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部

1Department of Liver, Biliary tract and Pancreas diseases, Fujita health university, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, Fujita health university hospital

キーワード :

【目的】
ソナゾイドによる造影超音波検査は血流評価に優れた検査法の一つであるが,胆膵疾患の診断にはソナゾイドによる造影超音波検査は保険適応となっていない.今回我々は当院の倫理委員会の承認を得てソナゾイドによる胆膵疾患の診断における造影超音波検査の有用性を検討した.
【対象と方法】
2007年1月から2012年9月までに当院で造影超音波検査を行った胆膵疾患症例 449例を対象とした.内訳は膵癌 180例,IPMN 48例,自己免疫性膵炎 33例,慢性膵炎 16例,膵内分泌腫瘍 10例,胆嚢癌 28例,胆管癌 17例,胆嚢コレステロールポリープ 20例,胆嚢腺筋腫 19例,胆石,胆泥 11例,硬化性胆管炎 11例など.主な使用機種はGE社製LOGIQ E9で,超音波造影剤ソナゾイド0.01ml/Kgを静注後,5分まで病変部を観察した.プローブはC1-5,または9Lを使用した.造影超音波の所見を,他の画像診断所見や生検,手術病理所見と比較し病変の血流動態や鑑別診断能につき検討した.なおソナゾイドによる造影超音波検査は当院の倫理委員会の承認を得て患者の同意を得て行った.
【成績】
膵癌では,投与直後に膵実質と同程度に染影するが,その後,速やかに染影が低下するパターンが全例に見られた.5分後に,内部に染影を認めなかった症例は60%,内部の染影を認めた症例は40%であった.染影パターンと膵管癌の病理組織学的分化度の間に有意な関係は見られなかった.IPMNでは全例で隔壁と壁在結節に染影を認め,壁在結節と粘液塊との鑑別が容易となった.自己免疫性膵炎は,腫大部が早期に染影されゆっくりと染影が低下した.腫瘤形成性膵炎は腫瘤部全体がびまん性に染影され,周囲膵と比べて同程度の染影効果を認めた.膵内分泌腫瘍は早期染影を認め,周囲の正常膵実質より一瞬早く染影された.その後は,速やかに染影は低下し,正常膵実質と同程度の染影になった.胆嚢癌では樹枝状に広狭不整な血管が染影され,腫瘍全体が濃染した.また後血管相では肝浸潤の有無や境界が明瞭となった.胆管癌も腫瘍全体が比較的強く染影された.胆嚢コレステロールポリープでは,基部に直線状の血管が描出され全体が淡く染影された.胆嚢腺筋腫では肥厚した胆嚢壁が染影し,壁の輪郭や内部のRASが明瞭となった.胆石,胆泥は無染影で癌との鑑別が容易になった.硬化性胆管炎は胆管壁の均一な染影を認めた.
【結論】
ソナゾイドを用いた造影超音波検査は,簡便で副作用の少ない安全な検査法である.胆膵疾患においても,病変の血流動態を評価できることより疾患の鑑別診断,癌の進展度診断に有用な情報が得られる.