Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション26 <教育に活かす> 消化器疾患診断に造影超音波は必要か?

(S286)

びまん性肝疾患の診療における造影超音波の意義

Clinical evaluation of the contrast enhanced ultrasound in patients with liver disease

住野 泰清1, 松清 靖1, 小林 康次郎1, 和久井 紀貴1, 池原 孝1, 渡邉 学1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2

Yasukiyo SUMINO1, Yasushi MATSUKIYO1, Koujirou KOBAYASHI1, Noritaka WAKUI1, Takashi IKEHARA1, Manabu WATANABE1, Takehide KUDOU2, Ken-ichi MARUYAMA2

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院超音波検査室

1Department of GI and Liver, Toho University Ohmori Medical Center, 2Ultrasound Labo., Toho University Ohmori Medical Center

キーワード :

【はじめに】
慢性肝疾患においては,病変の進行に伴い,炎症・壊死・線維化がおこり,実質内血流の状態は時々刻々変化する.特に浮腫や線維化は肝内血管抵抗の増加をもたらし,低圧系である門脈血の肝への流入を障害する.このとき,高圧系である動脈血の流入は大きな影響は受けず,むしろ門脈血流の低下を補うがごとくに増加する.すなわち,門脈と動脈のバランスが,肝障害の進展により変化する.血流は物質交換・代謝排泄を主軸とする肝機能の規定因子の一つであり,栄養と酸素の大半を供給する門脈血流の低下は,肝機能に大きな影響をおよぼすと考えられる.もちろん強大な肝予備能に支えられ,血流障害がすぐに機能障害に結びつくことは稀であるが,潜在的機能障害として掌握しておく必要がある.そこで演者らの施設では倫理委員会の承認のもと(審査番号:21-26),造影超音波をびまん性肝疾患の診断に拡大応用し,多くの興味ある成績を得つつある.今回はそれらの概要を示し,今後の可能性について述べる.
【対象・方法】
早朝空腹時に肝実質造影超音波を施行した急性肝炎17例(A型1例,B型13例,C型1例,AIH2例),アルコ−ル性肝障害28例,組織所見を得たC型慢性肝疾患135例を対象とした.装置は東芝AplioXG.造影超音波:Sonazoid0.015ml/kgをボーラス静注後,肝・右腎のfirst passを30秒間記録しarrival-time parametric imageを得,さらにそれをperfusion parametric imageに変換し,肝実質の灌流動態を検討した.さらに造影剤静注から15分後の後血管相(クッパーイメージ)においてflash replenishment sequenceで肝右葉のカーテンサインを得,その深さを測定し肝病変と比較検討した.
【結果】
C型慢性肝疾患:病変が進行すると動脈化が高度になり,線維化ステージと相関を示した.門脈圧上昇,門脈血流減少に対する代償性変化と考えられるが,さらなる類洞圧上昇を惹起する可能性があるため腹水,静脈瘤,脾腫と比較検討したところ,動脈化症例では腹水と静脈瘤が多い傾向が認められた.急性肝炎:急性期には17例全例が動脈化を呈し,第2病週には16例が健常と同様の門脈灌流パターンへと戻ったが,戻らなかった1例はLOHFへと進展した.アルコ−ル性肝障害:肝硬変例(ALC)はC型LCより著明な動脈化を来していた.Hyperdynamic circulationの影響を否定できず,現在検討中である.また経過観察例では飲酒すると動脈化するが,断酒して2-3週すると門脈灌流に戻るという所見が得られ,飲酒チェッカ−としての有用性が示唆された.一方カーテンサインは病変の進展に従い深くなる傾向を示した.病変進展によるクッパー細胞機能の低下,類洞内造影剤プールの減少を反映した所見と考える.
【まとめ】
Sonazoid造影超音波は,肝実質内の微細血管を形態的に検討するには不向きであるものの,いわゆる有効肝血流である実質灌流における門脈と動脈の動態を詳細に検討できることが示唆された.肝微小循環における動脈・門脈血流のバランスをコントロールしているメカニズムにはいまだ不明な点が多いが,疾患により多彩である可能性が高く,それを造影超音波で掌握できれば肝疾患の診断がさらに深まるものと確信する.