Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション17 <治療に活かす> 小膵癌:超音波検査を用いたステージⅠへのアプローチ

(S284)

EUS-FNAと造影ハーモニックEUSによるステージI膵癌の検討

EUS guided FNA and contrast Harmonic EUS for diagnosis of early pancreatic cancer

坂本 洋城, 北野 雅之, 工藤 正俊

Hiroki SAKAMOTO, Masayuki KITANO, Masatoshi KUDO

近畿大学消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
超音波内視鏡(EUS)は消化管内から,体外式超音波で描出が困難な部位を非常に近い位置から高解像度で観察することができるため,膵腫瘍の存在診断能が優れている.EUS-FNAはコンベックス型EUSを用い腫瘍の組織を採取する病理診断法であり,1992年Vilmannらにより初めて報告され,以後,消化管粘膜下あるいは消化管周辺組織の診断に使用されてきている.EUS-FNAは,腫瘍の良悪性の鑑別,進展度,組織型の診断を,組織診断,細胞診,さらには免疫組織診断によって行うことができる.本邦でも最近,この手技の重要性が認識されてきている.また,近年低音圧でもハーモニック信号を発生するソナゾイド等の第二世代超音波造影剤と低音圧の探触子を使用するEUSの登場により,従来のEUSでは困難であった造影ハーモニック(CH)-EUSが可能となり,腫瘍内の微小血流の描出が可能となった.元来,高分解能であるEUSに造影ハーモニックイメージングが加わることにより,小病変においても血流による質的診断が行えるようになった.
【目的】
今回,我々はステージI膵癌症例において,各画像検査による膵腫瘍性病変の存在診断能の比較を行い,またEUS-FNAおよびCH-EUSの診断成績を検討した.
【対象と方法】
2011年2月から2012年11月までにUS,造影CT(CE-CT),超音波内視鏡(EUS),CH-EUSを行ったpT1,ステージI膵癌14症例を対象とした.IPMN由来膵癌は本検討から除外した.超音波内視鏡はオリンパス社製GF-UE260PまたはGF-UCT260,画像装置はアロカ社製Prosound SSD α-10,超音波造影剤はSonazoid15μ//kgを用いた.EUSで膵腫瘍を描出後,造影ハーモニックモードに切り替えた後,Sonazoid静脈投与60秒後まで膵腫瘍実質染影像を観察した.EUS-FNA穿刺針は22Gまたは25Gを用い,10または20ccのシリンジを用いて吸引を行いながらEUS-FNAを施行した.EUS-FNAで得られた検体は生理食塩水内のシャーレに入れた後,直ちに検体をピンセットで採取しホルマリン固定を行った後組織診断を行った.ピンセットで検体が取り除かれた後の生理食塩水は遠心分離を行い,沈澱した検体に対し細胞診断を行った.
【成績】
膵腫瘍性病変の検出率はUS,CE-CTおよびEUSはそれぞれ42%,57%,および100%であり,EUSはUSおよびCE-CTと比較して有意に腫瘍描出能が優れていた.腫瘍を周囲膵実質と比較してhypovascularであったものを通常型膵癌とした場合,CH-EUSの感度は82%(9/11)であり,残りの2例はisovascularであった.EUS-FNAを行ったステージI膵管癌の9例中8例(89%)は細胞診または組織診断で膵癌と診断可能であった.EUS-FNAで病理診断ができなかった1例は,CH-EUSを行ったところhypovascularであり膵癌と質的診断が可能であった.
【まとめ】
ステージI膵癌の診断において,EUS検査は全ての画像診断の中で最も解像度に優れており,早期膵癌の発見には必要不可欠と考えられる.他の画像診断では膵管拡張等の間接所見のみ描出される症例でも超音波内視鏡では低エコー腫瘤として描出されることがあるため,US,CTあるいはMRIにて何らかの異常所見が認められた場合には,EUSを施行することが勧められる.また,造影ハーモニックEUSにて,血流の多寡により,他の画像診断で検出できなかった小病変の鑑別診断に有用であった.さらに,EUS-FNAはステージI膵癌でも病理診断が可能であり,治療方針決定に重要な役割を担うと考えられた.