Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション9 <治療に活かす> 急性腹症における超音波検査の今日的意義:今超音波は不要か?

(S281)

MDCT時代の腹痛症例における超音波検査の役割

The role of ultrasonography for the patient with abdominal pain in era of MDCT

太田 智行, 宮本 幸夫, 中田 典生, 西岡 真樹子, 福田 国彦

Tomoyuki OHTA, Yukio MIYAMOTO, Norio NAKATA, Makiko NISHIOKA, Kunihiko FUKUDA

東京慈恵会医科大学付属病院放射線科超音波診断センター

Radiology Diagnositic Ultrasound Center, The Jikei University Hospital

キーワード :

【目的】
MDCT時代の腹痛症例に対する超音波検査の役割を知ること.
【対象と方法】
対象は2012年内の連続した30日で,慈恵会医科大学付属病院(以下,当院)を受診した患者のうち画像診断依頼項目に“腹痛”や“右下腹部痛”など,“急性腹症”又は,急性腹症になりえる疾患名の記載があった外来患者172症例.経過2週間以上を目安に,経過の長い症例は除外.5歳以下の小児例では腹痛以外にも“嘔吐”や“血便”のような所見を依頼項目とし対象とした.第一選択となった検査によって患者をCT群,超音波群,MRI群に分類し,これらを比較検討することで腹痛患者における超音波検査の役割を検討した.尚,当院の緊急検査では,CTでは不要だが,超音波検査とMRI検査で放射線科医との交渉が必要であり,時間外では超音波検査の対応ができない.
【結果】
CT群147症例,超音波群22例,MRI群3例.男女比ではCT群82:65,超音波群8:14で有意差なし(P=0.09 Chi-square test).年齢は平均年齢(中央値)でCT群50.3(49),超音波群41.8(45.5)歳で有意差なし(P=0.11 Welch’s test).15歳以下の小児患者の割合CT群3/147例,超音波群3/22例(P=0.03 Fisher’s exact test),妊婦患者の割合CT群0/147例,超音波群3/22例(P<0.01)では超音波群が有意に多かった.入院になった症例の割合はCT群43/147例,超音波群4/22例で有意差ない(P= 0.28 Chi-square test)ものの,超音波群4例は3例が小児,1例が妊婦であり,妊婦を除く成人の入院症例はなかった.小児と妊婦を除く母集団では,入院症例がCT群42/144例,超音波群0/16例と,CT群で有意に多かった(P<0.01 Fisher’s exact test).入院から1週間以内の手術症例は計9例(急性虫垂炎5例,卵巣茎捻転2例,卵巣出血1例,消化管穿孔1例),内視鏡処置が必要であった症例が4例(止血術1例,EBD/ENBD3例)であったが,全てCT群であった.第一選択画像検査の後,1週間以内に付加的検査が行われているものがあるが,CT群で超音波3例(うち2例急性胆嚢炎),MRI 7例(うち5例急性胆嚢炎<USと1例重複>,1例総胆管結石,胆管炎),超音波群でMRI1例(SLE合併妊娠),MRI群で超音波1例(急性胆嚢炎)であった.MRI群3例のうち2例は婦人科疾患を念頭に置いた検査であった.
【考察】
全体の検査件数や入院になった患者の割合,手術件数や内視鏡治療症例数を考慮すれば,MDCT時代の腹痛症例の第一選択はCT検査である.CT群の138/147例(93.9%)では単独でworkupが終了するものの,急性胆嚢炎症例に限っては7例中6例(85.7%)で早期にMRI(MRCP)又は超音波検査による付加的評価が必要とされている点で注目される.但し,この場合でも超音波検査よりもMRCPが重用されている可能性があると思われる.また,妊娠患者や小児患者の腹痛症例では,現在でも超音波検査が第一選択となり得ることが示唆されたが,同時期の腹部領域超音波検査は全体で623例で,小児と妊婦の腹痛症例はその1/100にも満たない.検査体制の維持,技術の伝承,経験の蓄積という点で困難な面があることが予想される.当院では現在,小児症例に限り当日枠を新設し,小児症例の経験の維持,蓄積を試みている.