Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション9 <治療に活かす> 急性腹症における超音波検査の今日的意義:今超音波は不要か?

(S279)

急性腹症腸閉塞診断における超音波診断の展望

Is ultrasound examination useful for the diagnosis of intestinal ischemia in patients whom bowel obstruction is suspected?

大堂 雅晴, 堀 英昭

Masaharu ODO, Hideaki HORI

小林市立病院外科

Surgery, Kobayashi Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
急性腹症の原因疾患は多彩であり超音波検査の有用性もさまざまである.肝膿瘍,胆嚢炎など肝胆膵領域での急性腹症に対する超音波診断はその診断のみならず超音波ガイド下ドレナージなど治療においても有用であることは言う迄もない.しかし急性腹症の多くを占める消化管疾患ではいまだ消化管ガスが超音波検査の障害であるとの旧知の概念からCT検査がより有用視されでいるのが現状である.一方,急性腹症腸閉塞は急性腹症の中でも手術適応判断に緊急性を要する病態である.今回,この急性腹症腸閉塞に対する超音波検査での手術適応判断の可能性に関して検討した.
【対象】
2009年12月より超音波検査および造影超音波検査にて急性腹症腸閉塞症例に対する手術適応診断を行った23例を対象とした.男性9例,女性14例.平均年齢78±12才.
【方法】
使用装置は東芝社製Aplio XG,横河メディカル社製Logic9E,日立アロカ社製α-7.スクリーニング検査を通常のB-mode検査にて行い腸管壁の変化(壁厚,層構造),蠕動運動状態を確認し異常所見部位を中心にSonazoid(0.015mL/Kg)をワンショット静注し血管相での壁の造影効果を観察した.
【結果】
スクリーニング検査にて壁肥厚を22例(96%)に認め,門脈気腫を6例に認めた.造影超音波検査において11例に腸管造影効果認め,12例は腸管造影欠損部が確認された.造影陰性12例は全例緊急開腹手術の適応とし腸切除10例(絞扼性イレウス,非閉塞性腸間膜虚血,腸間膜静脈血栓症),イレウス解除術2例(絞扼性イレウス,瘢痕ヘルニア)を行った.造影陽性例は全例保存的治療の適応とし,その後回復の転帰となった.23例中造影CTは13例(57%)が腎機能,全身状態の問題から回避され腸管血流診断を造影超音波検査にて判断した.
【結語】
これまで消化管疾患に対する超音波検査は腸管ガスが超音波診断能力を減弱させるとの概念が先行し採用されることが少なかった.しかしながら急性腹症腸閉塞症例では腸管内腸液貯留により腸管壁の描出が容易となり,壁の変化,蠕動運動の状態を確認することが可能であった.またSonazoidによる腸管壁造影検査の採用により腸管虚血状態の把握が可能となり,これまでの超音波の利点であった腸管生理機能の観察と腸管血流状態がリアルタイムに観察することが可能となり,急性腹症腸閉塞を疑う症例の手術適応判断に対する新しいアプローチ法として有用な検査法であることが確認された.