Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション7 <診療に活かす> 肝疾患の診断治療に必要な新技術

(S276)

CAPおよびFD-ratioによる肝脂肪の定性および定量検査法の検討

Diagnosis and Measurement of Liver Steatosis Using CAP and FD-ratio

斎藤 聡1, 伝法 秀幸2, 窪田 幸一2, 宇賀神 陽子2, 竹内 和男3

Satosi SAITOU1, Hideyuki DENPOU2, Kouichi KUBOTA2, Youko UGAJIN2, Kazuo TAKEUCHI3

1虎の門病院肝臓センター, 2虎の門病院分院臨床検査部, 3虎の門病院消化器内科

1Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital kajigaya, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
従来,超音波検査は主観的かつ定性検査として多く用いられてきた,近年,肝線維化評価のためのエラストグラフィーをはじめとして客観的かつ定量検査としての新しい装置が開発されている.近年増加傾向あるNAFLDは,肝生検以外には病態把握が困難で,非侵襲的脂肪評価は重要性が高まっている.これまで,脂肪肝の診断には超音波検査は感度が高く,有用性が高いとされて,1.Bright liver,2.肝腎コントラスト,3.深部減衰,4.脈管不明瞭化の4所見が診断基準とされてきたが,診断装置の進歩により,Penetrationの向上などにより,逆に脂肪肝の診断に混乱がみられている.そこで,超音波を用いた,種々の新しい脂肪肝の定性および定量検査が登場した.そこで,その有用性に関して検討した.
【対象と方法】
対象は各種肝疾患2780例.脂肪定量方法は
1.Controlled Attenuation Parameter (CAP):CAPは50Hzのせん断波の速度計測からTransient Elastography (TE)を計測すると同時に減衰による脂肪肝定量を行うものである.Fibroscan502のMプローブを使用して,右肋間から,10回測定し,IQR30%以内で中央値を採用.2.Focal Disturbance Ratio (FD ratio):Acoustic Structure Quantification(ASQ)は,肝実質のスペックルパターン “粗さ”を定量化する手法であり,局所不均一性パラメータ(FD-ratio)はASQのグラフに表示される肝実質からの信号ラインと線維化や脈管壁など背景肝実質エコーより著しく逸脱した信号ラインの面積比である.Aplio XGでコンベックスプローブPVT-375BTを使用し.ASQモードで右肋間走査,Depth 8cm,フォーカス 4cm,ダイナミックレンジ 50,ゲイン 80,ASQモードで息止めにて記録.計測はフォーカス付近に血管等の構造物を避けてROIを3ヶ所設定し,測定した.
【成績】
1.CAP:TEからの肝硬度とCAPと比較 (n=2780)ではr=0.20で相関関係なく,組織学的検討(n=225)からは,NAS Scoreの脂肪肝分類より,S0 5%未満,S1 5-33%,S2 33-66%,S3 66%とすると,中央値,カットオフ値はそれぞれ,S0:201dB/m,233dB/m,S1: 242 dB/m,253 dB/m,S2:272 dB/m,296 dB/m,S3:318 dB/m,>297 dB/mであった.なお4%は皮下厚25mm以上で,原理上,肝臓以外の部位も測定となり,測定不能ないしは信頼性に乏しい値であり,除外した.これはBMI35以上に相当した.
2.FD ratio:中央値は,正常肝(n=71)は0.23に対して,脂肪肝(n=65)では0.05と有意(p<0.01)に低値,CT値との比較では相関関係がr=0.63であった.CT値による脂肪量を軽度41〜50HU,中等度31〜40HU,高度30以下とするとそれぞれ,0.06,0.04,0.02と低下がみられた.FD ratioに関しては全例計測可能であった.
3.CAPとFD ratioの比較:両者はr=-0.61と負の相関関係を認めた.カットオフ値をそれぞれ,230dB/mと0.15とすると脂肪肝の診断に関して,AUROCはそれぞれ0.962,0.973と両者ともに良好であった.
【結語】
脂肪肝の診断および定量に関してCAPおよびFD ratioはともに定性・定量検査として有用と考えられた.