Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム4 <治療に活かす> 肝線維化の画像診断

(S272)

非侵襲的な肝線維化の診断:各種パラメータにおける診断能の比較

Noninvasive parameters for grading hepatic fibrosis

近藤 孝行, 丸山 紀史, 関本 匡, 亀崎 秀宏, 嶋田 太郎, 石橋 啓如, 高橋 正憲, 太和田 暁之, 今関 文夫, 横須賀 收

Takayuki KONDO, Hitoshi MARUYAMA, Tadashi SEKIMOTO, Hidehiro KAMEZAKI, Taro SHIMADA, Hiroyuki ISHIBASHI, Masanori TAKAHASHI, Akinobu TAWADA, Fumio IMAZEKI, Osamu YOKOSUKA

千葉大学医学部附属病院消化器内科

Gastroentroenterology and Hepatology, Chiba University Hospital

キーワード :

【目的】
肝線維化の程度は,肝疾患例の診療において極めて有用な指標である.近年,侵襲的な肝生検に代わる非侵襲的な線維化推定法が導入されてきた.まず弾性度測定によるFibroscan (Echosens, Paris, France)が,信頼性や再現性に優れる利点から,代表的な肝線維化推定法として普及した.またtype Ⅳcollagen 7s(Ⅳcol7s)やFIB-4は,血液検査成績から算出される非侵襲的線維化マーカーとして知られる.一方,造影超音波からみた肝における気泡の循環動態も,肝線維化を反映すると報告されている.今回我々は,これら4種の非侵襲的肝線維化マーカーにおける診断能を前向き研究にて比較検討し,多様な線維化推定因子の実臨床における使用法について考察した.
【方法】
対象は,2008年6月から2011年11月までに組織学的に診断された慢性肝疾患74例(男29,女45,年齢56.0±14.2歳; HCV 33, HBV 13, AIH 11, NASH 6, NBNC 11; F1 17, F2 20, F3 18, F4 19)である.全例で4種の検査,すなわち2種の画像診断として肝弾性度測定(Fibroscan 502,10回の計測値の中央値,KPa)とソナゾイド造影超音波,また2種の血液マーカーとしてⅣcol7s,FIB-4(年齢(年)×AST(U/L)/[血小板(109/L)×ALT(U/L)1/2])を施行した.各検査法について,単一あるいは組み合わせ検査としての肝線維化の診断能をROC解析にて比較検討した.なおソナゾイド造影超音波では,門脈右枝・肝実質最大輝度比到達時間,すなわち門脈右枝に造影剤が到達してから門脈右枝と肝実質との輝度比が最大となるまでの時間を算出し,線維化推定マーカーとした.本臨床研究は,当院における倫理委員会で承認され,十分なインフォームドコンセントと同意のもとで施行された.
【成績】
1.各種検査成績:各種検査結果はそれぞれ肝弾性値(F1 6.3±4.2, F2 7.6±3.5, F3 11.0±5.4, F4 30.2±20.3),造影パラメータ(秒) (F1 5.1±2.3, F2 6.3±1.8, F3 6.7±1.8, F4 12.7±5.6),Ⅳcol7s(ng/ml) (F1 4.9±2.3, F2 4.3±1.2, F3 5.0±1.6, F4 7.8±2.1),FIB-4(F1 1.3±0.5, F2 2.2±1.1, F3 2.3±1.5, F4 6.2±4.5)であり,全てのパラメータで肝硬変と慢性肝炎との間には有意な差が認められた(P<0.0001).また各種検査のカットオフ値はそれぞれ肝弾性値(≧F2 7.0, ≧F3 10.2, ≧F4 16.3),造影パラメータ(秒) (≧F2 7.0, ≧F3 8.0, ≧F4 11.0),Ⅳcols7s(ng/ml)(≧F2 6.4, ≧F3 4.4, ≧F4 5.1),FIB-4(≧F2 1.6, ≧F3 2.8, ≧F4 2.8)であった.
2.単一検査法での比較:ROC曲線下面積(AUC)は,≧F2に対してはFIB-4が最も優れ(0.83; 95% CI, 0.71-0.91),次いで造影超音波(0.81; 95% CI, 0.67-0.90)および肝弾性値(0.81; 95% CI, 0.67-0.90)が優れており,Ⅳcol7sは(0.60; 95% CI, 0.44-0.74)であった.≧F3に対しては肝弾性値(0.85; 95% CI, 0.73-0.92)が最も優れ,次いで造影超音波(0.79; 95% CI, 0.67-0.87),FIB-4(0.78; 95% CI, 0.66-0.86),Ⅳcol7s(0.75; 95% CI, 0.63-0.85)であった.またF4にはⅣcol7s(0.92; 95% CI, 0.83-0.96)が最良で,次に肝弾性度(0.91; 95% CI, 0.76-0.97)およびFIB-4(0.91; 95% CI, 0.81-0.96),造影超音波(0.87; 95% CI, 0.72-0.95)であった.
2.組み合わせ検査法での比較:≧F2に対するAUCは,造影超音波とFIB-4の組み合わせが0.87(95% CI, 0.74-0.94)と優れていた.同様に≧F3では造影超音波と肝弾性値の組み合わせ0.89(95% CI, 0.78-0.94)が優れており,F4についても造影超音波と肝弾性値の組み合わせが0.99(95% CI, 0.97-1.00)と最善であった.
【結語】
非侵襲的な肝線維化の推定には単一検査よりも組み合わせによる検査が勝っていた.特に画像診断である造影超音波や肝弾性値測定は,その軸となる検査法である.