Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム4 <治療に活かす> 肝線維化の画像診断

(S270)

Aixplorerを用いたShearWaveによる組織弾性イメージングの基礎的検討

Basic research of tissue elastic imaging by shear wave method with Aixplorer

多田 俊史1, 熊田 卓1, 豊田 秀徳1, 金森 明1, 安田 鋭介2, 安本 浩二3, 齊藤 幸映4

Toshifumi TADA1, Takashi KUMADA1, Hidenori TOYODA1, Akira KANAMORI1, Eisuke YASUDA2, Koji YASUMOTO3, Yukie SAITO4

1大垣市民病院消化器内科, 2鈴鹿医療科学大学保健衛生学部放射線技術科学科, 3三重県立総合医療センター中央放射線部, 4キヤノンライフケアソリューションズ株式会社医療機器ニュープロダクト販売課

1Department of Gastoroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital, 2Dept.of Radiological technology, Suzuka University of Medical Science, 3Dept.of Radiological technology, Mie Prefectural General Medical Center, 4Medical Equipment New Products Sales Dept., Canon Lifecare Solutions Inc.

キーワード :

【目的】
最近,超音波診断装置で定量的に組織弾性をリアルタイムに測定できる肝線維化診断法の報告を散見する.ShearWaveTM Elastography(以下SWE)を搭載した超音波診断装置Aixplorer(SuperSonic Imagine社製)(以下,Aixplorer)による組織弾性値の計測原理は,プローブよりフォーカスされた超音波ビームを送信して組織を上下に振動させることでshear waveを発生させる.異なる深度にフォーカスビームを送信することにより,円錐形の shear wave波面が形成され,横方向に伝播するshear wave波面の伝播を全ての振動子で送受信を同時に高速で行い,これを繰り返すことで(UltraFastTM Imaging)shear wave伝播の動画像を取得し,その移動距離と時間から速度を求め,この速度から組織弾性値を計算し,kPa単位で表示する.今回われわれは,AixplorerのSWEを用いて組織弾性定量法の基礎的検討を行ったので報告する.
【方法】
ファントム成分は高分子ポリマーで,弾性の異なる複数のElastographyファントム(OST株式会社)を使用した.検討項目は,1)背景肝を想定 ①エコーウィンドに設定するSWE ROIの深度(上・中・下)と方位(右・中央・左),②ROIを9分割したQ-Box(弾性値計測ツール)の設定位置,③SWE ROIの深度(上・中・下)とSWE Opt,Bモードのフォーカス深度,Harmonicの有無,④プローブの違い 2)結節を想定 ①エコーウィンド内SWE ROI設定の方位(右・中央・左),②SWE ROI内の結節深度(上・中・下)で,測定条件が定量値に及ぼす影響を検討した.なお,弾性値の測定は各条件下で3回行い,mean±SDで評価した.
【結果】
1)背景肝を想定 ①ROIの深度別にみた弾性値は,ファントム中央の表面から順に8.67±0.25,8.07±0.06,7.73±0.76と,深くなるに従って低値を示し,方位の違いによる一定の傾向はなかった.②Q-Box設定位置別の弾性値をみると,エコーウィンド右のROIでは8.1〜9.3,中央が7.9〜9.4,左が7.4〜9.5に分布し,それぞれの変動率は順に5.0%,6.8%,7.8%であった.③SWE Opt(Res,Std,Pen),Bモードのフォーカス深度(2cm,5cm,9cm),Harmonicの有無による弾性値の変動はいずれも認めず,ROIが深くなるに従って低値を示した.④プローブ別にみた弾性値は,コンベックスが8.6±0.1,リニアが8.03±0.06と前者でやや高値を示した.2)結節(結節が背景肝より柔らかい場合)を想定 ①エコーウィンド内のSWE ROI設定を方位(右・中央・左)別にみると,エコーウィンド右のSWE ROIが8.5±0.35,中央が8.0±0.2,左が8.77±0.35と,エコーウィンド両側での弾性値が中央に比べて高値を示した.②SWE ROI内の結節深度(上・中・下)別にみるとファントム表面から順に,8.0±0.17,7.9±0.12,7.7±0.21と深くなるに従いやや低値を示した.
【考察および結語】
Aixplorerによる組織弾性値の測定にあたって,SWE ROIとQ-Box設定位置による若干の変動を認め,これは測定対象が浅い位置ではプローブの重さ,深い位置ではエコーの減衰,方位方向ではshear waveの伝播特性が考えられ,これらを考慮した組織弾性の定量評価が必要と思われた.