Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム3 <科学に活かす> 肝脂肪沈着の画像を科学する

(S266)

脂肪肝とは(概念,臨床像)

Current concept and clinical spectrum of fatty liver

角田 圭雄

Yoshio SUMIDA

京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学

Department of Gastroenterology and Hepatology, Graduate School, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

脂肪肝とは肝細胞に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指す.原因としては大きくアルコール性と非アルコール性に分けることができ,非アルコール性の原因としては肥満(内臓脂肪蓄積),糖尿病,脂質異常症,メタボリック症候群などの生活習慣病に加えて,薬剤(ホルモン剤など),外科手術,中心静脈栄養,C型肝炎ウイルスなども候補となる.米国肝臓病学会が2012年6月に非アルコール性脂肪肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD) の定義を発表し,1) 画像診断あるいは組織学的に脂肪化を認める,2) 目立った飲酒歴がないこと (エタノール換算で男性210g/週,女性140g/週未満),3) 肝脂肪化や慢性肝疾患の原因となる他の要因が存在しない,以上の3項目を満たすことが必須とされた.NAFLDは国内に約1,000万人存在すると推定され,国内最大の肝疾患であるが,NAFLDには肝硬変,肝癌へ進行し肝疾患関連死亡 (liver-related mortality: LRM) に至るリスクの高い非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH) とLRMに至るリスクの低い非アルコール性脂肪肝 (nonalcoholic fatty liver: NAFL) に分類される.NAFLDの約20%がNASHであり,近年NASH由来の肝癌が著しい増加を示し,問題となっている.NAFLDの多くは無症状のため,健診などでALT値の上昇と画像診断により診断されることが一般的である.画像診断の中では超音波検査が簡便で安価でありその有用性は確立されているが,ほかの画像診断同様に軽度の脂肪化例での検出感度が低いことが課題である.一方,NASHの診断には肝生検が必須であるが,侵襲,サンプリングエラー,リスク,コストなどの課題があり,実際の臨床現場では全例に施行することは不可能である.そこで近年,臨床検査値によるスコアリングシステム,造影超音波検査やエラストグラフィなどの画像診断により非侵襲的にNASHあるいは線維化進行例を鑑別する手法も開発されつつある.またわれわれはNASHの原因遺伝子としてPNPLA3を報告した.今後解決すべき課題としてはNASH/NAFLDにおける各画像診断の位置づけや,従来のスコアリングシステムとの比較,画像診断による肝癌のサーベイランスや治療後の経過観察の方法などが挙げられる.現在日本消化器病学会ではNASH/NAFLD診療ガイドラインを作成中であり,NASH/NAFLD診断に関するこれまでのエビデンスやトピックについても報告する.