Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション22 <科学に活かす> 右心機能評価には何がよいか

(S250)

陳旧性心筋梗塞患者における右室機能:左室機能との関連

Right Ventricular Function in Patients with Myocardial Infarction

土肥 薫1, 小西 克尚2, 伊藤 正明2

Kaoru DOHI1, Katsuhisa KONISHI2, Masaaki ITO2

1三重大学大学院検査医学, 2三重大学大学院循環器・腎臓内科学

1Department of Molecular and Laboratory Medicine, Mie University Graduate School of Medicine, 2Department of Cardiology and Nephrology, Mie University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
心筋梗塞患者では,右室梗塞を合併しない場合でも右室機能が低下し得る.
【目的】
陳旧性心筋梗塞患者における右室機能評価および右室機能障害の機序解明.
【方法】
右室梗塞の既往のない陳旧性心筋梗塞74例(左心室駆出率 45±16 %)と,年齢・性別をマッチさせた健常者45例について,心エコー・スペックルトラッキング法による右室および左室機能評価を行った.左心室長軸ピークストレイン(左室ストレイン)は四腔,二腔および長軸断面より測定し,右室長軸ピークストレイン(右室ストレイン)は四腔断面より測定した.右室ストレインは,心室中隔から自由壁にわたるグローバルストレインと,自由壁ストレインをそれぞれ評価した.また全症例において心エコーによる推定肺動脈圧および推定肺血管抵抗を算出した.全例で血清BNP値も測定した.
【結果】
左室ストレインは健常者群に比べ,陳旧性心筋梗塞群において四腔,二腔および長軸断面で有意に低下していた.右室においてもグローバルストレインおよび自由壁ストレインは陳旧性心筋梗塞群において健常者群に比べ低下していた(グローバルストレイン: -18±6* vs. -25±4 %,自由壁ストレインストレイン: -22±7* vs. -26±6%, *p<0.05).また,心エコー計測上,肺高血圧を呈する患者は28%であった.右室グローバルストレイン,自由壁ストレインともに左室ストレイン,左室駆出率,肺血管抵抗,および対数化血清BNP値などと有意な相関関係が認められ,多変量解析では,左室四腔断面のストレイン,BNP>500pg/mlなどが右室ストレインの独立規定因子であった.陳旧性心筋梗塞症例を血清BNP値によって3群に分けると(グループA: BNP >100 pg/ml; n=32, グループB: 100 <BNP <500 pg/ml; n=26, and グループC: BNP >500 pg/ml; n=16),グループCのみで右室ストレインと左室四腔断面のストレインに強い直線相関が得られた(図).
【結論】
陳旧性心筋梗塞患者において,右室長軸収縮機能は左室長軸収縮機能に大きく影響を受け,特に血清BNP値の高い患者ほどその傾向
は顕著であった.心筋梗塞後の右室機能障害の進展は,右室後負荷増大のみに起因するのではなく,左室非梗塞部位と同様に神経体液性因子の影響を受けて進展する遠隔リモデリング機序が関与していると推定される.