Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション21 <治療に活かす> 3D経食道エコーで見る弁膜症手術のためのポイント

(S246)

3次元経食道心エコー図検査による大動脈弁形成術を考慮したタイプ診断のポイント

The role of three-dimensional transesophageal echocardiography for repair-oriented classification of aortic regurgitation

金子 明弘1, 田中 秀和1, 大北 裕2, 川合 宏哉1, 平田 健一1

Akihiro KANEKO1, Hidekazu TANAKA1, Yutaka OKITA2, Hiroya KAWAI1, Ken-ichi HIRATA1

1神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野, 2神戸大学大学院医学研究科心臓血管外科学分野

1Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine, 2Division of Cardiovascular Surgery, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

近年,重症大動脈弁閉鎖不全症に対して自己弁温存基部置換術を含む大動脈弁形成術を行うことが可能となり,本邦においても形成術を選択される機会も多くなりつつある.これらは現時点では標準術式ではないが,症例数は徐々に増加傾向にあり,大動脈弁置換術に劣らない遠隔成績が示されつつある.ACC/AHAのガイドライン上,有症状の重症大動脈閉鎖不全症はClassⅠで大動脈弁置換術の適応となる.一方,無症状の重症大動脈弁閉鎖不全症では左室駆出率が50% 未満か(Class I),左室拡張末期径が75mm以上もしくは左室収縮末期径が55mm以上であれば(Class IIa)大動脈弁置換術の適応となる1.しかしながら,ガイドラインに基づいて治療を進めると,無症状の慢性重症大動脈弁閉鎖不全症患者では,左室拡張末期径が75mmもしくは左室収縮末期径が55mmの大きさに拡大するまで内科的治療をせざるを得ず,その間に心不全症状が出現し,左室の非可逆的な障害が出現することが予想される.さらに,大動脈弁形成術が可能であると考えられる症例では,弁尖の変性が進展する前に手術を施行することが不可欠であり,左室拡大が進行していない時期での手術が推奨されるかもしれない.したがって,今後大動脈弁形成術の適応が確立されれば,重症僧帽弁閉鎖不全症と同様に手術適応がより早期となり,術前に弁形成術の可能性を評価する重要性が増すと考えられる.
El KhouryやBoodhwaniらは手術術式を考慮した大動脈弁閉鎖不全症の成因分類を推奨している2.大動脈基部拡大を伴う正常弁尖運動あるいは弁穿孔をタイプⅠ,弁尖逸脱や過剰弁尖運動をタイプⅡ,弁尖硬化に伴う弁尖運動制限をタイプⅢと分類している.タイプⅢは弁形成術の成功率が低いとされており,術前に行う成因診断は非常に重要である.しかし,大動脈弁は僧帽弁と異なり,弁尖が菲薄で,接合面が浅く,3尖であり,弁尖付着部が3次元構造をしているため,成因診断が難しい.よって,2次元の心エコー図検査だけでは不十分と考えられる.近年,臨床応用されている3次元経食道心エコー図法は,これらの成因診断にさらに有用であり,大動脈弁や大動脈基部病変の3次元情報を視覚的に心臓外科医に提供することが可能であるとともに,3次元情報を元に作成した複数の2次元画像を用いることで,3尖を各弁尖ごとに評価することが可能である.また,これまでの2次元画像では超音波ビーム方向に重なる2つの弁尖同士の開放と閉鎖を確認できるのみであったが,3次元画像では,任意の弁尖同士もしくは,各弁尖ごとの開放と閉鎖を確認することが可能である.当院においても3次元経食道心エコー図検査が導入されてからは,術前と術中直視下との大動脈弁閉鎖不全症のタイプ診断の正診率は格段に上昇しており,弁形成術の適応を決定する上で不可欠な検査法となっている.
今回は,大動脈弁閉鎖不全症に対し弁形成術が可能となった時代における,3次元経食道心エコー図検査での大動脈弁形成術を考慮したタイプ診断のポイントについて症例を呈示しながら論じたいと考えている.
【参考文献】
1.Bonow RO et al. Circulation. 2006;114:e84-231
2.Boodhwani M et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2009;137:286-294