Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション6 <診療に活かす> Integrated imagingの時代へ:エコー,CT,MRIの使い分け

(S233)

MDCTによるリスク階層化と不安定狭心症の診断

Cardiac risk stratification: Role of the coronary calcium score andrelationship between CT coronary angiography and stress perfusion imaging

小山 靖史

Yasushi KOYAMA

特定医療法人桜橋渡辺病院心臓血管センター画像診断科放射線科

Department of cardiology and radiology, Sakurabashi Watanabe Hospital

キーワード :

冠動脈CT検査は,国内でも沢山の施設で行われるようになり,様々な目的で使用されている.本セッションでは,各種モダリティーとの総合を考えるうえで,冠動脈疾患のリスクの階層化と冠動脈の形態から機能的な狭窄診断へとリアルワールドの心臓CT検査を紹介し議論したい.1.リスク階層化と石灰化スコアの役割非造影CT画像で分かる冠動脈壁性状は石灰化であり,その石灰化を計測したものを石灰化スコアという.石灰化は,AHAの動脈硬化分類でVbの進行病変である.また,石灰化は,加齢による退行性変化ではなく,血管の動脈硬化の存在自体を反映し,正常血管には,石灰化は認めない.CTによる石灰化スコアの算出法はAgatston score,Mass score, Volume scoreの3つの方法があり,リスク判定に用いられる.組織学的検討から,必ずしも,冠動脈狭窄の程度,部位とは一致しないが,総動脈硬化量と一致すると報告されている.欧米での報告が多数で,本邦での全国レベルの大規模検討の報告は少なく,人種や性別での違いもある.最大の特徴は,独立した危険因子であることに加え,造影剤を使うことなく,低被ばく(1mSv以下)で施行できこの被ばく量は,内臓脂肪のCT定量測定に匹敵する.これまでのデータや当院での石灰化スコアから石灰化ゼロ患者は,きわめて低い冠動脈疾患の合併率であり,また,年齢不相応な石灰化患者は,高い冠動脈疾患の合併が認められる.さらに,石灰化の増加に伴い狭窄病変や有意狭窄病変,閉塞病変も増加する.今日,造影剤や高い被ばく(石灰化スコアの3〜20倍)から詳細な冠動脈の壁(非石灰化プラーク)の情報は得られるが,これまでの石灰化スコアの階層化を上回る合理性と正当性は,いまだ確立しておらず,CTにおける非石灰化病変が,石灰化スコアや血管造影上の重症判定を上回る危険因子としての位置づけを行う必要がある.まずは,進行した石灰化の観察からしっかりとした日本人のリスク階層化を進めることが重要と思われ,本セッションでは,当院の1万5000件のデータベースの結果と海外のデータを提示しながら石灰化スコアの役割について考えたい.2. CT冠動脈造影(CTA)と不安定狭心症患者における冠動脈情報を持つ唯一の非観血的薬物負荷CT検査(CTP)との関係 2011年から臨床応用されてきたCTの反復逐次近似法を用いた,被ばく低減技術の向上により,撮影時の被ばく量は著しく低減されており,薬物負荷CTパフュージョンが臨床的に可能となり,虚血判定やバイアビリティー評価が可能となってきた.これまで,CTAの形態的な狭窄だけでは,患者管理上不十分であり,核医学検査とのフュージョンイメージなども提唱されたが,イメージの位置を合わせる困難さや,最終的な結論までに患者は,2つの被ばく検査を受ける必要があることが,コストや合理性において問題であった.一方で,中等度狭窄病変は,急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome: ACS)の発症にも関係し,多くのACS患者が発症まで無症状であることから,破綻しやすい冠動脈プラーク(不安定プラーク:Vulnerable plaque)の検出のみならす早期の虚血判定は重要である.前述の石灰化の多い高リスク患者においては,なおさらである.本セッションでは,冠動脈情報を持つ唯一の非観血的負荷試験としての薬物負荷CTについて初期成績と合わせて紹介するとともにVulnerable patientsに対する診断のプロセスについて考えたい.