Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
パネルディスカッション6 <診療に活かす> Integrated imagingの時代へ:エコー,CT,MRIの使い分け

(S232)

FMDによるリスク層別化

Flow-mediated dilation (FMD) for risk stratification in patients with atherosclerosis

麻植 浩樹

Hiroki OE

岡山大学病院超音波診断センター

Center of Ultrasonic Diagnostics, Okayama University Hospital

キーワード :

血管内皮機能障害が動脈硬化の発症機転として注目されている.冠動脈疾患は血管内皮機能障害が基本病態となり,進展した結果であると考えられているが,高血圧,脂質異常症,喫煙,肥満などの危険因子を有する症例で,血管機能異常を早期に診断し,適切な治療ができれば動脈硬化が形成される前に予防することも可能になる.多くの医学的,生活習慣への介入が血管内皮機能障害を改善させ,心血管イベントを減らすことが報告されている.FMDによる血管内皮機能障害の評価は患者のリスク層別化や積極的な疾病予防に有用であるのみならず,動脈硬化の進展および心血管イベントを予知する重要な因子となり,治療介入による改善のマーカー,大規模研究での代替エンドポイントとしても期待される.動脈硬化危険因子への介入のリスク低減効果は限られており,残存リスクが問題となることも知られている.糖尿病では「糖尿病患者の動脈硬化性疾患発症・進展予防には,血糖コントロールのみでは不十分であり,脂質異常症や高血圧,肥満,喫煙など危険因子を,包括的にかつ厳格に管理する必要がある」とされる.最近心血管イベントの新たな予測因子として,食後高脂血症が注目を集めており,糖尿病に伴う脂質異常に対しても積極的介入が必要と考えられるが,これまで確立された治療はない.Dipeptidyl peptidase-4 (DPP4) 阻害剤は様々な膵外作用を有することで注目されている.今回我々はDPP4阻害剤 アログリプチンの投与が食後の脂質代謝,血管内皮機能に及ぼす影響に関して検討した.対象は健常成人10人(平均35±10歳,男性8名),クロスオーバー法でアログリプチン25mgを1週間内服する群とコントロール群に分けて検討した.約30gの脂質を含むクッキー負荷を行い,負荷前と負荷後2,4,6,8時間後に血液検査とユネクスイーエフ(UNEX Co.)を用いたFMDを行った.結果コントロール群では食後の%FMDの低下とTG, ApoB48の増加の間に有意な相関が認められた.一方アログリプチンの投与は食後TG,ApoB48の増加を抑制,GLP-1濃度の増加を有意に増加,%FMD の低下を抑制させ(-4.1±1.5% to -1.9±1.0%, p<0.05)(図),脂質負荷による一過性の食後高脂血症と,それに伴う血管内皮機能低下を抑制し,動脈硬化の進展を予防する可能性が示唆された.