Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム18 <治療に活かす> カテーテル治療における心エコーの役割

(S225)

経皮的心房中隔欠損閉鎖術における心エコーの役割

The Role of echocardiography in transcatheter atrial septal defect closure

矢崎 諭, 北野 正尚, 阿部 忠朗, 山田 修, 小野 晋, 塚田 正範, 松岡 道生, 谷口 由記, 星野 真介

Satoshi YAZAKI, Masataka KITANO, Tadaaki ABE, Osamu YAMADA, Shin ONO, Masanori TSUKADA, Michio MATSUOKA, Yuki TANIGUCHI, Shinsuke HOSHINO

国立循環器病研究センター小児循環器科

Division of Pediatric Cardiology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【経皮的心房中隔欠損閉鎖術の現状】
心房中隔欠損(ASD)の閉鎖ディバイスとして世界中で最も多く使用されているAMPLATZER Septal Occluder (ASO)は2005年から日本での使用が開始され7年が経過した.2010年からは循環器内科医の参画を得て,2012年の認定施設は小児循環器科主体28施設,循環器内科主体15施設の計43施設となっている.閉鎖栓供給企業の集計によると,2012年11月までのASDに対するASO留置完了症例数は3451例であり,男性1237例,女性2214例であった.年齢は0-9歳786例,10-19歳1041例,20歳以上1605例,不明19例であった.使用閉鎖栓は6-10mm:355例,11-15mm:1062例,16-20mm:1135例,22-30mm:814例,32-38mm:60例,多孔欠損用Cribriform occluder:25例であった.ただしメーカー集計は治療実数と若干の乖離があり,2012年までの治療総数はおよそ4000例程度と見積もられている.国内の合併症報告を見ると,これまでにASO留置に直接の因果関係を持った死亡や重度後遺症を来す合併症の報告はない.Erosionと総称される閉鎖栓による心血管組織の損傷は9症例で,うち6例が心穿孔,3例が大動脈心房短絡を呈し,いずれも外科的治療で対処されている.発症時期は治療後1日から6か月までであった.閉鎖栓の脱落は留置手技および回収手技途上のアクシデントも含めて18症例の報告がある.発生はカテーテル室内が13症例,病院内が5症例で退院後の脱落はない.6例がカテーテルで回収,12例が外科的回収を受けた.これら2大合併症の頻度を分母を約4000として計算すると,Erosionが0.23%,脱落が0.45%となり,諸外国の頻度概数であるErosion約1/500,脱落約1/200にほぼ等しい.当院では2012年までに683例にASO留置を試み674例(98.7%)に留置した.留置中止9例の内訳は,閉鎖栓による心房壁圧迫の観察のため回収5例,閉鎖栓の安定性不十分2例,留置不能2例(いずれも留置トライ中に心房中隔壁の断裂を合併し断念)であった.留置完了症例の年齢は5-78歳(中央値20歳),肺体血流量比は0.8-7.4(平均値2.3),ASD長径は多孔性や卵円孔様形態を除いて5-31mm(平均値15mm),閉鎖栓サイズは6-34mm(平均値19mm),2個の閉鎖栓留置例は8例,透視時間は診断カテーテル部分を含んで4-48分(平均値15分)であった.合併症として回収手技途上の閉鎖栓脱落(左心室)と留置3か月後発症の大動脈心房短絡があり,2例とも外科手術で対処されている.
【心エコーの役割】
ASO留置術は治療の適応判断・治療の成否・安全性の確保のすべてにおいて心エコーが鍵となる.心エコーがすべてであると言っても過言ではない.本治療の流れとしては,経胸壁心エコー(TTE)および経食道心エコー(TEE)による適応判定→TEEや心腔内エコー(ICE)を併用したナビゲーションによる留置→TTEを主体とした治療後経過観察となるため,治療を熟知した心エコー技術の存在が欠かせない.なぜなら留置手技自体は技術的には平易であり治療成績はASDの解剖に依存するからである.第一段階として心エコーで解剖学的にASO留置に適する症例を選択することが治療の成否に大きく影響し,第二段階として 治療時のTEEにより適切な閉鎖栓サイズを選択することと,留置後に閉鎖栓と心房壁や周辺構造との関係を確実に評価することが合併症回避の鍵となる.さらに,これらの経験と治療後の経過観察を症例選択や治療手技にフィードバックすることでより安全な洗練された経皮的心房中隔欠損閉鎖術が完成して行くと考えている.