英文誌(2004-)
特別プログラム 循環器
シンポジウム18 <治療に活かす> カテーテル治療における心エコーの役割
(S224)
TAVRでの経食道心エコーの役割ー2Dと3Dの使い分け
Main Roles of 3D Tranesophageal Echocardiography in Transcatheter Aortic Valve Replacement
丸尾 健1, 福 康志1, 遠藤 桂輔2, 横田 佳代子2, 山本 浩之1, 筑地 日出文2, 後藤 剛1, 門田 一繁1, 光藤 和明1
Takeshi MARUO1, Yasushi FUKU1, Keisuke ENDO2, Kayoko YOKOTA2, Hiroyuki YAMAMOTO1, Hidefumi CHIKUJI2, Tsuyoshi GOTO1, Kazushige KADOTA1, Kazuaki MITSUDO1
1財団法人倉敷中央病院循環器内科, 2財団法人倉敷中央病院臨床検査科
1Cardiovascular Medicine, Kurashiki Central Hospital, 2Laboratory Medicine, Kurashiki Central Hospital
キーワード :
【はじめに】
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)が本邦で始まり,約3年が経過した.時期を前後して3D経食道エコー(TEE)が普及し,TAVRにおいても有用性が期待されている.
【弁輪径の計測】
TAVRにおいて外科的弁輪径の計測は非常に重要である.当初,2D TEEの長軸像から弁尖のヒンジ部分,石灰化の外側を計測し求めた値がstandardとされていた.しかし,大動脈弁輪は解剖学的に存在するものではなく,3つの弁尖がaortic rootに付着する底の3点を通る仮想弁輪を弁輪と定義する考え方がある.この仮想弁輪は円ではなく楕円である.3DTEEでは三次元的に多断面再構築画(MPR)像から仮想弁輪の設定を行い,楕円である弁輪断面から弁輪径を求めることが可能である(図).しかし,CTの多列化により画像の再現性,SN比が改善しCTから求めた仮想弁輪径をstandardとする施設が多くなっている.3D TEEで計測した場合,CTと比較して値が小さくなる傾向があり,今後の検討が必要である.
【弁の位置合わせ】
バルーン拡張によって留置するタイプのTAVRでは生体弁の位置合わせが重要である.拡張の前に,外科的弁輪を基準に位置合わせを行い留置するが,透視だけでなくTEEで弁の位置を把握し,位置を調整することが,3DTEEの2断面表示で可能である.しかし,上下だけでなく多方向で弁の位置,角度もモニターすることが望ましいが,通常の2Dでは様々な方向を一度に描出することは困難である.また僧帽弁の様な術者がイメージしやすい画像も現状では難しい.3D TEEを用いたリアルタイムでのMPR像,カテーテルの術者にもイメージできるvolume rendering画像の描出が今後の課題であろう.
【その他】
2D断面では,断面の切れ方によって弁尖の数が不明確になることも多かったが,3DTEEでは,二尖弁等の全体像が把握でき弁尖の数が明確に認識できる.また,TAVRを施行する際に,石灰化が冠動脈を閉塞,バルサルバ洞を傷つけることがあり,3Dによる正確な把握が必要である.その他,3Dもしくは2断面表示は,ワイヤー,カテーテル,シースの位置,心機能評価など,術中,術後のガイド,モニターとして有用な場面が多くある.
【まとめ】
TAVRにおいて3DTEEは有用だが,課題も多い.Structural heart diseaseの経カテーテル的治療がクローズアップされている中,更なる技術の発展,施行者の工夫が望まれる.