Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム13 <治療に活かす> 超音波による骨評価:臨床と基礎から

(S207)

予防・検診における超音波検査の意義とガイドライン

Utility of Quantitative Ultrasound for screenig of osteoporosis

山﨑 薫

Kaoru YAMAZAKI

磐田市立総合病院整形外科

Orthopaedic Surgery, Iwata City Hospital

キーワード :

【QUS(Quantitative ultrasound)の特性】
わが国で普及している6,000台近いQUS装置は,踵骨を評価する透過型装置が主流であるが,下腿骨の長軸方向に伝播する速度を測定する反射型あるいは橈骨遠位端部を被測定部位とし,その測定部位のimaging 機能を備えた国産の装置もある.このQUS法の最大の利点は,放射線の被曝を伴わないことである.そのため,DXA法などを施行しにくい小児や妊婦も被験者とすることが可能で優れた安全性を有している.また,最近は改良によって水槽を用いないドライタイプの装置がほとんどで,小型化が進んだことにより可搬性に優れ,医療機関に常設しなくても希望者のもとへ出向いて測定することも可能で,医療行政機関などが行う骨量検診などには最適な装置である.
【QUS指標の標準化】
QUS法ではSOSとBUAが算出される.しかし,判定すべき数値が二種類あると評価が煩雑で,さらに各社独自の二次パラメータの含めてその解釈はQUSに精通していないと難しい.日本骨粗鬆症学会QUS標準化委員会では,踵骨を対象とするQUSの標準化したSOSを求める作業を行った.その結果,各機種のSOS値間には一定の互換性があり,その回帰分析から標準化したSOS(以下S-SOS)に換算して表現することが可能となった.
【S-SOSの加齢変化と脊椎骨折症例を対象としたROC解析】
委員会では問診上健康と思われる女性データを収集しS-SOSの経年的データをまとめた.頂値(peak value)は,16歳のS-SOS平均値であり,以後,85歳までに約3SDの加齢的減少を認める.さらにX線写真により脊椎骨折の有無を確認した症例(脊椎骨折あり例:374例,骨折なし例:563例)でROC解析を行とその敏感度と特異度が一致する値は,頂値から2.3 SD減少した値であった.骨粗鬆症性骨折例における解析では,敏感度と特異度が一致する値を骨折閾値とすることが一般的で,頂値から2.3 SD減少した値はQUSによる評価の目安となる値である.
【QUSの値をどのように臨床診療に利用するか】
QUSに関する国の内外での研究から,QUSが骨質に関わる情報を提供できること,骨折のリスクを予測できることに関しては,国際的なコンセンサスが得られた事実である.また一方でDXA法などとは測定原理が全く異なるのであるから,多少の相関関係があってもQUS法では骨密度そのものを測定しているわけではないことも事実である.現在,WHOは若年健常者の平均値から2.5 SD以上減少した骨密度である場合に骨粗鬆症と定義している.骨密度の値を基準にすべきことを提唱していることから,第13回日本骨粗鬆症学会で提唱された原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改定版)では,「QUSは,骨折リスクを予測することは可能であるが,骨密度そのものを測定しているわけではない.」という理由から,QUSの値は骨粗鬆層の診断基準に採用されていない.このことは,QUS法の値は骨粗鬆症の診断に利用するのではなく,個々の骨折リスクの大小を知るためのassessment toolとして用いるべきであることを示唆している.すなわち,QUSによる骨量検診では骨折のリスクの高い状態にあるのか,ないのかを評価する.診療の場で経時的にQUSの変化を観察した場合は治療により骨折リスクを軽減できたかどうかを評価するという解釈でQUSの臨床的意義を考えていく必要がある.