Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム9 <科学に活かす> 最新の超音波診断装置技術の動向

(S203)

CMUT技術による医用超音波探触子の実用化

Development of Ultrasound Probe with CMUT Technology

佐光 暁史1, 田中 宏樹2, 町田 俊太郎2, 吉村 保廣3

Akifumi SAKO1, Hiroki TANAKA2, Shuntaro MACHIDA2, Yasuhiro YOSHIMURA3

1日立アロカメディカル株式会社技術統括本部, 2株式会社日立製作所中央研究所ライフサイエンス研究センタ, 3株式会社日立製作所日立研究所機械センタ

1Medical Systems Engineering Division, Hitachi Aloka Medical, Ltd., 2Central Research Laboratory, Hitachi,Ltd., 3Hitachi Research Laboratory, Hitachi,Ltd.

キーワード :

従来より,超音波探触子内の振動材料には圧電セラミックスが一般的に用いられてきた.圧電セラミックスとは圧電体の一種であり,電界を印加することで,機械的ひずみが発生する材料である.圧電セラミックスは,携帯電話内のSAWフィルタや自動車エンジンのインジェクター,インクジェットプリンターなどに用いられており,多種多様のシーンで我々の生活を支えている.
一方,CMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducer)はシリコン基板上に厚さ数百nm〜数umの超微細な振動膜を設けたMEMS(Micro Electro-Mechanical System)デバイスである[1].MEMSとは半導体製造技術を用いて作製される,機械エネルギーと電気エネルギーの変換を行う微小デバイスである.MEMS技術を用いた製品例としては,圧力,ジャイロ(角速度),加速度等のセンシングデバイスがあり,近年のIT技術を支えるコアデバイスとなっている.
CMUTは,シリコン基板上に厚さ数百ナノメートルの真空間隙を設け,その上下面に電極を設けたMEMSデバイスである.超音波送信時には真空間隙間に電界を印加することにより,静電気力が発生し,真空間隙上の振動膜が励振される.同様に,受信時は,振動膜が機械的に振動することにより静電容量が変化し,電気信号を検出することができる.このように,CMUTは静電気力を介して,機械エネルギーと電気エネルギー変換を行うデバイスである.本デバイスを用いて,当社は2009年に乳腺用超音波探触子Mappieを開発した[2]
CMUTは圧電セラミックスと比較して,入力電気信号に対して短パルスの応答を示し,ブロードバンドな特性が得られる特長がある.従来の圧電セラミックスでは,生体とのエネルギー伝搬効率が低いために生体間に音響整合層を設ける手法が用いられている.しかしながら,音響整合層の効果は原理的に周波数依存性があるために,パルス波形の劣化や帯域の減少が避けられない.一方,CMUTは振動膜と間隙を適切な大きさや厚さに設計することで,生体とのエネルギーマッチングが向上し,整合層が不要となる[3].以上の原理によりCMUTではブロードバンド特性が得られ,診断画像においてはペネトレーションと高分解能を両立させることができる.また,CMUTは低発熱性,電気回路混載化(インテリジェント化)が可能,といった特長も有しており,現在,国内外の研究機関や企業においてCMUTの応用開発が精力的に進められている[4][5]
本発表では,CMUTと圧電セラミックスの構造,原理の違いを論ずるとともに,診断画像における特徴に関しても述べる.
[1]M.I.Haller and B.T.Khuri-Yakub, 1994 IEEE Ultrasonic Symp., pp.1241-1244.,1994.
[2]佐光他,“cMUT技術による超音波プローブの評価”, 日超医第82回学術集会,82-A-032, 2009.
[3]田中他,“cMUTのパルス特性解析”, 日超医第82回学術集会,81-A018, 2009.
[4]S.Machida et al., “Capacitive micromachined ultrasonic transducer with driving volatage over 100V and vibration durability over 1011 cycles”, Tech Digests IEEE Transducers 2009, pp.2218-2221, 2009.
[5]Coskun Tekes et al., “3-D Real-Time Volumetric Imaging Using 20MHz Diameter Single-Chip CMUT-on-CMOS Array”, 2012 IEEE Ultrasonic Symp., 3J-1,2011.