英文誌(2004-)
特別プログラム 基礎
シンポジウム8 <科学に活かす> 組織の弾性と粘性:基礎と臨床応用
(S200)
乳腺超音波検査におけるviscoelasticityの臨床的意義
Utility of Viscoelastography for breast ultrasound
中島 一毅
Kazutaka NAKASHIMA
川崎医科大学総合外科学
Department of General Surgery, Kawasaki Medical School
キーワード :
最近の乳腺診療領域では,超音波検査が極めて重要なツールとして位置づけられている.これにはこれまでの形態診断であるB modeに,DopplerやElastography,造影超音波検査などの新しい質的診断モードが加わったことが大きく貢献している.特にElastographyはその性能の向上とともに,単なる診断だけでなく,術前,術中検査,さらに治療効評価にも使われており,すでに必須の乳腺領域検査となっている.しかし,その多くは正常乳腺よりも硬いかどうかが重視され,硬い部分を評価し良悪性を判断する評価方法である.もちろんStrain Elastographyは硬い部分を青く表示してくれるため,大変臨床上有用なのであるが,同時に軟らかい部分(粘調部分)も赤く表示してくれている.我々はこの粘調部分を表示するElastographyの機能に以前より注目しており,数年前の超音波医学会総会では「ElastographyにおけるRed Areaの意義」を報告させていただき,幸い奨励賞を頂くことができた.その後も本研究を継続しており,昨年,乳房温存手術時の切除範囲決定にElastographyを含むComprehensive Ultrasoundの有効性を論文報告させてもらった.これはElastographyで赤く表示される粘調部分と青く表示される硬い部分のパターンを利用し,病理学的進展範囲を推察する手法である.また,当科では乳がん手術時の内視鏡的アプローチ方法にもこの赤く表示される粘調部分を利用しており,大変有用と実感している.今回,このviscoelasticityの臨床応用の実例を紹介し,粘調部分をElastographyで評価する臨床的意義を解説させていただきたい.