Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
検査士制度委員会特別企画 指導検査士試験に挑戦!

(S194)

指導検査士試験:産婦人科領域のポイント

Tips for the examination; Obstetrics and Gynecology

小林 浩一

Koichi KOBAYASHI

社会保険中央総合病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Social Insurance huo General Hospital

キーワード :

指導検査士の試験制度が昨年からスタートした.腹部領域の検査士の方々からは,指導検査士の領域の中に産婦人科が含まれていることを,高いハードルと捉える人も少なくないと聞いている.今回は,産婦人科領域の指導検査士委員として,指導検査士に求めたい産婦人科領域の知識と技術について概説する.
産婦人科の超音波診断というと,どうしても胎児診断,すなわち胎児異常の有無や胎児発育,あるいは胎児の胎内での状態の診断などを想像しがちであるが,われわれ産婦人科領域の試験委員が指導検査士に求めたいのは,胎児診断ではない.なぜならそうした診断は,本邦の現状ではそのほとんどが産婦人科医か,専門の産(婦人)科超音波検査士によって行われており,腹部領域全体をカバーする検査士の皆さんにはそうした診断を行うチャンスもなければ必要性もないと考えられるからである.それに代わって検査士の皆さんに求めたいのは,女性が「腹痛」を主訴に病院を受診する可能性のある疾患,あるいは病態についての知識である.特に指導検査士には,救急外来を直接受診することはまれであっても,腹痛を起こす疾患や病態については十分な知識を持っていただきたいと考えている.(1)妊娠に関連した腹痛
「女性を見たら妊娠と思え」とは,医療界では昔からよく言われる格言である.妊娠に関連した腹痛としては,流産・切迫流早産,子宮外妊娠,子宮筋腫の変性,常位胎盤早期剥離,そして陣痛発来などがあげられる.筆者は,腹痛を主訴に救急外来を受診し,著明な腹部膨隆が認められたために担当医が直ちにCTを撮影し,結果妊娠していることが判明,陣痛発来であったため産婦人科に紹介となったという症例経験が何度かある.指導検査士には,胎児異常の診断能力は求めないが,こうした症例に対しての胎位胎向や児心拍の有無,胎盤の位置の把握,そして胎児推定体重の測定程度の診断が出来ることを望んでいる.推定体重の測定については,難しいと感じられるかもしれない.しかしこうした場合,患者は妊娠したこと自体に気づいていないので,妊娠週数などははっきりさせることが出来ない.診断した病院が大学病院や周産期センターであればよいが,一般の病院では産科自体がないか,あってもNICUを持たない病院も多く,推定体重によって未熟児の可能性を判断し,紹介先の病院を選ばなければならないことが少なくないため児体重が推定できることは重要だと考えられる.
(2)妊娠に関連しない腹痛
妊娠に関連しない腹痛としては,まず思い当たるのは卵巣腫の茎捻転や破裂,骨盤内感染症などがあげられるが,意外に多く見られるのが月経困難症(いわゆる生理痛)と,卵巣出血である.指導検査士に挑戦!しようとしている検査士の皆さんで,卵巣腫の茎捻転の診断をしたことがない方は,ほとんどおられないと思われる.救急出動の要請が比較的多いにもかかわらず,超音波検査士の方々が症例に遭遇することが比較的少ないと思われるのは月経困難症と,卵巣出血である.これらは,患者が最初から産婦人科を指定してくることが多いので,一般の救急外来に搬送されることが少ないのだと思われる.当然のことながら,前者は月経中であるし,後者は,ほとんどが黄体期であり,多くは性交中か,性交後に痛みを発症する.このように,産婦人科の救急疾患は,単に画像診断のみではなく,妊娠しているかどうか,月経中か,周期のどのあたりであるか,また発症機転などを上手に,かつ真摯に聞き出せる能力も必要であり,実技・面接ではその部分も確認していきたいと考えている.