石田 秀明

Hideaki ISHIDA

秋田赤十字病院消化器科

Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

第一回指導検査士試験が2012年に試行された．長年この様な上級指導検査士試験の実現を求めてきたものとしては，“まず，やっと第一歩”，と，“さあこれからも同じレベルを維持しなくては”，など．過去と未来が複雑に交錯する思い以上に，“やってみて予想以上に素晴しい試験”，という満足感が強い．1）なぜ指導検査士が必要？これはいつもの繰り返しになりますが，現在わが国で日夜試行されている超音波検査のほとんどが“我流の超音波遊びのレベル”を出ておらずはてしなく誤診を繰り返し患者さんにご迷惑をかけ続けている，という現状を打破したかったからです．確かに，医師の指導も悪いし，指導できる医師も少ない，という医師側の責任も大きいのですが，技士の意識として，“技士には技士のやり方があるので医師は口出ししないで欲しい”という密室行為を主張する人も多い．特に，a）年はとったし，b）ポストは上だが，c）技はない，という古参技士さん達が密室を占拠し指導医師に入室させない傾向があり，それが悪の根源でした．その前時代制度を打破するには，同胞である技士さんの手による（技士による技士の為の技士の）民主化運動ならば問題はない，というのがこの差別化のねらいでした．では，2）指導検査士には何が求められの？それは“真の”総合力です．それが（本題）試験で問われます．そこで，以下に，試験対策も含め（今回のテーマである）消化器領域のポイントを列挙します．
1.巨大な現場力：腹部疾患は，a）症状が出にくい，b）急を要する，c）数が多い（疾患数も症例数も），d）消化器以外の疾患もある，などで，短時間に正確な診断が求めれます．そのためには，どこから飛んでくるか分からない弾を避けながら相手をしとめる沈着冷静さ以外に，長時間検査を続ける精神的肉体的強靭さが求められます．これは主に，作成リポート（1次），動画試験（2次）で試されます．→ポイント：平素から多数の症例を丁寧にみてください．
2.大いなる指導力：自己完結型パワーではなく地域全体の技士さんを指導する人間力も，これは主に書類選考（1次）で評価されます．→ポイント：平素から施設内だけでなく施設外の技士さんも丁寧に指導してください
3.はてしない前進力：新技術に関しても貪欲に取り込んでください．自分の施設で施行していないから知らないでは指導者になれません．これは主に，静止画+動画試験（2次）で試されます．→ポイント：平素から頼れる指導医と知識（+知恵）交換を綿密に．超音波の原理は特にしっかり把握を！
4.輪郭がぼけない勉強力：“なんとな〜く〜”ではではない正確な知識が求められます．用語の定義，疾患の診断基準，などがその代表です．この点は主に，静止画試験（2次），と口頭試問（3次）で試されます．→ポイント：平素から用語は正確に使う習慣を持ちましょう．
5.力に満ちた説得力と納得力：4）とダブりますが，思考過程や診断根拠を論理的に表現する技術は必須です．この点は主に，口頭試問（3次）で試されます．→ポイント：平素から論理的に思考する習慣を持ちましょう．
備考：1）造影超音波や3Dを施行していない技士さんが多数なのは事実ですが，だから造影超音波，などを試験問題に加えないことにはならないのです．現在を知らない検査士の未来の指導を託すわけにはいかないのです．2）指導検査士は，a）ご本人の能力（+努力），b）施設力（規模，設備），c）施設内環境（超音波に対するし施設の意識レベル），d）地域環境（指導者の有無）の総和力が試されています．総和力向上の第一歩は自分から．