Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
検査士制度委員会特別企画 指導検査士試験に挑戦!

(S193)

指導検査士に求めるもの

What are the qualities and abilities needed to be qualified as a senior sonographer?

畠 二郎

Jiro HATA

川崎医科大学検査診断学

Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

指導検査士とは「他の検査士よりちょっと上手な検査士」ではなく,まして「年季の入ったベテラン検査士」や「有名な大病院に勤務する技師」でもない.文字通り,「他の検査士を指導する」に足る能力を持ち合わせた検査士である.では,他の検査士を指導するためには何が求められるのであろうか?オフィシャルな資格である以上試験委員会全体のコンセンサスが前提ではあるが委員個々の間に多少のニュアンスは存在すると思われ,以下に今回の試験結果もふまえた私見を述べる.
1.医学に対し謙虚である:ベテラン技師になるほど個人的経験のみで物事を語ろうとする傾向に陥りがちであり,講習会などにおいても誤った知識を聴衆に伝えている場面に遭遇することがある.これは本来あってはならないことであり,自分が何を知り,また何を知らないかを冷静に判断し,知らないことに対しては謙虚に学習する態度がなければ後進を指導する資格はない.これについては特に面接(試問)の際に個人差がみられたが,受験者各位には改めて自らの知識を整理し,それらが真実か否かを確認して頂くことを望む.
2.疾患や病態に関する豊富な知識を有する:診断とは特定の疾患である確率を高める作業であり,まずはあらゆる可能性を想定する必要がある.良く分かる,ということで急速に普及した画像診断であるが,必ずしも一目で分かる,という意味ではない.パターン認識のみに依存せず,ある所見を見た時にどのような疾患を想定し,その診断のためにはさらに何が必要かというプロセスを設定できることが重要であり,何よりその疾患を知らなければ想定は不可能である.これは1次試験の書類審査から3次試験の実技・面接までのすべての段階で窺い知ることができたように思われる.その点でもあまりに安易なレポートは指導検査士としては論外である.
3.立体解剖を熟知している:西洋医学の診断は解剖学的診断から始まり,画像診断となればなおさら解剖の知識は必須である.また知っているだけで実践できなければ意味はない.今回の実技試験では比較的平易な課題であったにもかかわらず,目的臓器の概ね1/3程度の領域のスキャンしかできていない受験者もみられたように思う.雑な走査法を後進に指導することは診断能の低下に直結するため,是非とも見落としの無い走査法に習熟して頂きたい.
4.超音波の基礎を理解している:ドプラも含めた超音波画像はどのようにして作られ,画像に影響する因子は何か,を理解していないと画像を解析し正しい診断を決定することは困難であり,また十分に超音波の性能を活用することもできない.今回の試験ではレポートにそれに言及した記載がほとんどみられなかったことや,試問においては誤ったあるいは不十分な基礎知識を有する受験者がみられたことは残念であった.
5.医療チームの一員であることを意識している:後進の検査技師を上手に指導し,検査室全体のモチベーションとレベルを向上することが求められている以上,単に優れた職人芸を持っているだけでは不十分であり,少なくとも周囲が容認できる人間性が必要とされる.また常に医師との情報交換を行い,治療経過を含めたfeedbackが技量の向上には必須であり,反省無く同じ誤診を繰り返すことは医師からの信頼を失墜させ超音波検査全体の衰退に直結する.これについては面接でしか窺い知ることはできなかったが,それでも受験者間で多少の差異があるように見受けられた.
以上,本資格を目指すことは超音波検査全体の興隆につながることであり,今後多くの検査士が受験されることを期待している.