中島 英樹¹, 瀬尾 由広², 佐藤 希美², 菅野 昭憲², 渥美 安紀子², 山本 昌良², 川村 龍², 榎本 真美², 石津 智子², 青沼 和隆²

Hideki NAKAJIMA¹, Yoshihiro SEO², Kimi SATO², Akinori SUGANO², Akiko ATSUMI², Masayoshi YAMAMOTO², Ryo KAWAMURA², Mami ENOMOTO², Tomoko ISHIZU², Kazutaka AONUMA²

¹筑波大学附属病院検査部, ²筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科

¹Department of Clinical Laboratory, University of Tsukuba Hospital, ²Cardiovascular Division, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

キーワード :

【はじめに】
今日の心エコー図検査は，循環器疾患を診断するうえで必要不可欠な検査であり，得られた数多くの情報をいかに臨床医に伝えるかが重要である．そのためには診断価値のある画像を記録すること，そして検査で得られた所見から臨床医が求める答えに的確に伝えるレポートを作成することが必要である．
【診断価値のある画像とは】
診断の決め手となる画像に検査者の伝えたい気持ちを込めて記録する．そのためには，各疾患に応じた正確な描出方法に加え，症例に適した周波数，フォーカスならびにゲインなどを調節する．例えば心尖部に瘤を認めた場合，ただ漠然に心尖部を記録するのではなく，心尖部壁在血栓の有無を確認するために高周波プローブで真の心尖部を描出する．次いで，心尖部を拡大し，ゲイン調節ならびにフォーカスを心尖部付近に調節し記録する．検査者の気持ちを込めた画像は，臨床医が見たときに診断価値のある画像として納得する．
【臨床医が求める検査レポートとは】
心エコー図検査の依頼目的に対してよく理解し，病態や鑑別診断を含めて的確に答えることである．例えば，心室性期外収縮，心室頻拍の既往で心エコー検査を行う場合，心筋梗塞や心筋症（拡張型心筋症，心サルコイドーシスなど）を疑うが不整脈源性右室心筋症（ARVC）も念頭に右心系の精査を行い，器質的変化がどの部位に起こっているか，どの心筋症を疑うかレポートに記入する．また，心不全の精査のために検査を行う場合，収縮不全，拡張不全および弁膜症の有無を評価し，左房圧が上昇しているかを診断し，レポートに記載する．このように臨床所見から疑われる疾患を推定し，臨床医が何を目的として検査を依頼してきたかよく理解してレポートを作成する．
【最後に】
診断価値のある画像の記録，臨床医が求める検査レポートを作成するためには，心エコーの知識，技術だけでなく，それぞれの疾患をよく理解し，自分の作成したレポートが正しいか，間違いであるかを他のモダリティー，治療経過とともにフィードバックし，心エコー所見と臨床の病態を組み合わせる日々の積み重ねが重要である．これらを検査技師だけで行うには限界があり，医師との密接な連携が必要不可欠であると私は考えている．